【シゴトを知ろう】レコーディングプロデューサー 編
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多くのミュージシャンにとって、ライブとともに大事な音楽活動といえば、レコーディング。理想とする音楽を録音して形にするために、ときにはバンドメンバー以外の声に耳を傾けたり、アイデアを求めたりすることも必要です。
そんなレコーディング現場で重要な役割を果たすのが、レコーディングプロデューサーの仕事です。今回は、株式会社 スペースエイジ 東京支社 音楽企画制作事業部の川戸良徳さんに、プロデューサーとしてレコーディングにどのような関わり方をしているのか教えてもらいました。
この記事をまとめると
- 24時間、7日間音楽漬けになることもある
- 音楽にかかわる上で、「音楽が好きだという気持ち」は大事
- 好きなものを大事にしていると、自分が行きたいという道がおのずと見えてくる
24時間音楽漬けといってもいい仕事
Q1. 仕事概要を教えて下さい
私は音楽企画制作事業部でプロデューサーとして働いています。普段の仕事は、午前中はデスクワークが中心で、メールチェックしたり、担当アーティストの情報をSNSでチェック・拡散したりしています。午後からは制作に関する打ち合わせ、プランニングなどをしたり、レコード会社やCDショップとの商談をしたりします。夜はライブを観に行くこともあります。
レコーディング関係の仕事では、まず作品を企画し、スケジュールと制作予算を立てます。制作予算は、市場調査をしつつ、今までのアーティストの実績、今回目標にしたい売り上げ枚数、必要な宣伝費用等から具体的に収支を立てて作ります。そして、スタジオをどこにするか、エンジニアを誰にするか、レコーディング期間をどれくらいにするか、アーティスト、作品にあったプランニングを行います。私が担当しているアーティストの中にはプライベートスタジオやいつも同じエンジニアで制作するケースもあるので、アーティストが一番やりやすい方法で制作できるように尊重してお任せする場合もあります。
また、アーティスト、作家との様々な契約書を作成したり、スタジオやエンジニアの予約取り、海外でレコーディングする場合はその手配もしなくてはいけません。アルバムジャケットの制作、映像PVの制作に関することや、取材媒体を決めたりCDショップでどのような展開をしてもらうかなど、販促・宣伝にも関わっています。ですから、だいたい23時~0時くらいまで仕事していることも多いですね。土日は基本休みですが、担当アーティストのライブが入っていることが多いので、そのライブに顔を出しています。ある意味、24時間、7日間音楽漬けと思ってもらってもいいですね。
レコーディング中は、機材のセッティングをしたり、エンジニアと一緒に音のジャッジをしたりします。最終的なジャッジを任されることもありますが、もちろんアーティストが納得がいくものでなければ世の中に出したくないですし、アーティストも私も納得するというのが大前提ですね。ただし、それに対して、自分も「今回はこういう風に見せたいのでこういうものを作りたい」という話はしますし、リード曲や曲順を私が提案して決めることもあります。
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
私は音楽ファンを一人でも多く増やしたいんです。いくら自分が好きなアーティストを売り込んだところで、音楽ファンがいなかったら私がいいと思っている音楽は伝わらないと思うので、市場をつくる、売場をつくるということを意識して仕事をしてます。本気の興奮音楽が世の中にいっぱいあふれたらいいなと。使い捨ての音楽ではなく残る音楽を紹介したい。それが仕事の目的であり、やりがいですね。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
やりがいがある反面、休みがないことですかね(笑)。なかなか自分の時間が取れないという辛さはあります。でも、365日音楽漬けでいられることは、自分にとって幸せなことです。
「音楽が好きだという気持ち」だけは大事にしようと思っていた
Q4. どのようなきっかけ・経緯でレコーディングプロデューサーに就きましたか?
大学を卒業後は、好きな音楽に少しでも関われる仕事につきたいと思い、最初はCDのジャケットを印刷する会社に就職しました。そこではレコード会社へ営業に行ってました。そして、仕事をもらう側から作り出す側へいきたいなと思い、しばらくして転職しレコード会社で制作や営業をやりながら仕事を覚えていきました。その後、2社のレコード会社を経て、音楽事業を展開している出版社に入社したんですが、今年の夏に退社し、より本気の興奮音楽を届けるべく新たにスペースエイジという会社でレーベル事業を立ち上げ、現在に至ります。
Q5. 大学で学んだことは、どのように生きていますか?
大学で法律を学んだので、今の仕事での契約を交わすときなどに法律の知識が役に立っていますね。逆に、もっと勉強しておきたかったことは、英語です。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
音楽が好きでバンドをやったりしていたのですけど、音楽の仕事に携わるとは思っていなかったですし、将来何をしようかなと思っていました。ただ、「音楽が好きだという気持ち」だけは大事にしようと思っていました。その気持ちをずっと大事にしていたから、今の仕事につながっているんだと思います。DJやイベントオーガナイザーをしたりして遊びの中からも自然と仕事につながっていきましたので好きな事を探求し続けることは非常に大事だと思いますね。
何かにぶつかったとき好きなものを大事にしていると自分が行きたいという道がおのずと見えてくる
Q7. どういう人がレコーディングプロデューサーに向いていると思いますか?
「しつこい人」が向いていると思います。何事も諦めないで取り組める、しつこい人です。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
自分は「音楽が好きだ」という気持ちだけは一生大事にしていこう、と思っていたから今があると思っています。高校生のみなさんにも、好きなものを大事にしてほしいです。何かにぶつかったときに、好きなものを大事にしていると、自分が行きたいという道がおのずと見えてくると思います。もし好きなものがない人は、自分が興味を持てるものを、どんどん探して感性を磨いて下さい。なんでもいいんですよ。私はたまたま音楽でしたけど、スポーツでもファッションでも映画でもいいんです。興味のあるものがあればあるほど、その人にとって道はおのずと開けていくものだから、そういうものは誰に何を言われても大事にしてください。
2016年10月に日比谷野音でワンマンライブを行ったTHE MACKSHOW、マイク以外PAなしの「生音ライヴ」が評判のTHE NEATBEATS、フジロックにも出演し海外でも活躍中のBloodest Saxophone、ボストン在住の日本人ビートメイカーmonologといったアーティストを担当している川戸さん。古き良き時代の音楽を現代にアップデートしながら活動する彼らの音楽の魅力を伝えるためには、何よりも自分が「音楽が好き」であることが一番大事なことなんですね。将来は音楽に関わる仕事に就きたい!と考えている高校生のみなさんは、夢に向かってその気持ちを忘れずに、さまざまな音楽を楽しんでみてくださいね。
【profile】プロデューサー 川戸良徳
【取材協力】株式会社 スペースエイジ 東京支社
この記事のテーマ
「音楽・イベント」を解説
エンターテイメントを作り出すため、職種に応じた専門知識や技術を学び、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨きます。音楽制作では、作詞・作曲・編曲などの楽曲づくりのほか、レコーディングやライブでの音響機器の操作を学びます。舞台制作では、演劇やダンスなどの演出のほか、舞台装置の使い方を学びます。楽器の製作・修理もこの分野です。
この記事で取り上げた
「レコーディングプロデューサー」
はこんな仕事です
CD・ネット配信・レコード用の音楽を制作する際に、企画、宣伝、販売、作詞家・作曲家・演奏者などのスタッフ人選、ジャケットデザイン、印刷、プレス、制作費管理など、全ての責任者であり、プロデュースを担当するのがレコーディングプロデューサー。音楽大学や音楽専門学校を卒業し、レコード会社や音楽制作プロダクションに就職して、アシスタントプロデューサーとして経験を積み、プロデューサーにステップアップする道が一般的。音楽の専門知識はもちろん、ミュージシャンの実力、将来性、商品価値などを把握し、市場を見据えて「売れる曲」を提案できる能力が必要とされる。
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