【シゴトを知ろう】アートディレクター ~番外編~
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梅本千愛(ちえ)さんのお仕事は、広告のビジュアルについて決めていくアートディレクター。プライベートでも、「楽しい!」「きれい!」など心が動いた瞬間にはつい仕事のことを考えてしまうんだとか。
今回は、そんな梅本さんから伺ったアートディレクターの職業病や、今からできるアートディレクターになるためのトレーニング方法などについてご紹介します。
この記事をまとめると
- 休みの日、家でのんびりするよりも「もっといろいろなことを知りたい」
- 仕事である以上、自分の世界観を100%投影できるわけではない。でも、いつかそんな仕事がしたい!
- アートディレクターを目指すなら、まずはこんなトレーニングから
街を走っている車のデザインでさえも気になってしまう
――「アートディレクター」の職業病みたいなものはありますか?
これはきっと広告に携わる人全員に共通していると思うんですが、プライベートな時間でも、常に仕事のことが頭をよぎってしまうというのが普通になりますね。
仕事のことが頭から完全に離れてしまうということはあまりなくて、無意識の中でも、感性を刺激されるものや広告を目にしてしまうと意識してしまうというのはあると思います。
私の場合、プライベートで「楽しい!」とか高揚感があればあるほどその傾向が顕著になってしまう感じで(笑)。
お客様からいただいた情報をインプットして、それを広告としてアウトプットしていくということを仕事にしていると、どうしてもその両者が近い関係になるんです。すごくきれいなものを目にしたら、「この感動を見る人に与えるためには、どんなグラフィック表現をしたら伝わるかな?」と考えてしまったりします。
――本当に目に入るものがすべて気になってしまうんですね。
そうですね。あと広告を見て思うのは、「どんな経緯で、この絵を広告に使うことが採用されたのかな」ということ。車などの乗り物を見たときにも考えてしまうことがあります(笑)。
好きなものが仕事になっているので、自然と考えてしまうということもあるんだとは思います。
私の性格なのかもしれませんが、ゆっくりと何も考えずに休みの日に家のベッドの上でボーっと過ごしたいというのはあまりなくて、休みがあるのであれば「もっといろいろなことを知りたい」と思います。
「独特の世界観」は、抑えなくてはいけないことばかり
――アートディレクターにはどのような人が多いですか?
バランス型の人が多いのかなと思います。
アートディレクターは両極端のことをしなくてはいけないというジレンマがつきものなんですよね。みんな「自分はこれが好き!」という独特の世界観があるものの、お仕事としてデザインをするためには、そこは抑えなくちゃいけないことばかりです(笑)。
いつか、「自分が本当にやりたかったこと」とクライアント(依頼主)の願いがシンクロしたらいいなと思うことは、結構多いと思います(笑)。
――入社前と後でギャップを感じたことはありましたか?
そもそもの出発点として、広告代理店と制作会社のイメージが私の中で混ざってしまっていたことが原因の戸惑いというのはありました。
元々デザイナーとして入社させていただいたんですが、「グラフィックデザインを自分で作りたい」と思って入ったので、「広告代理店だとあまり自分でデザインできないんだ……」というモヤモヤはちょっと感じていました。
ただ、実際に仕事を始めてみると、私には制作会社よりも代理店の方が向いているなと感じることは多いです。
どうやったら人に伝わるか。まずは言葉にして伝えるトレーニングから
――「アートディレクターを目指したい」という人がしておいた方がいいことはありますか?
高校の時から何かするというのであれば、友達やご両親、先生など周りの方に、自分が思っていることや感じていることを「言葉にして伝える」というトレーニングを日常的にしておいた方がいいかなって思います。
「食べたものがおいしかった」「今日見た景色がものすごくきれいだった」とか、本当に何でもいいと思うんです。「相手にどういう風に言ったら伝わるかなぁ……」って考えてみることから始めてほしいですね。
「おいしかった」「きれいだった」という感情的な部分から伝えていくのか、それとも、その物事を客観的に見て事実から伝えていった方が伝わりやすいのかなど、「誰かに何かを伝える」という方法は何通りもあります。その中で一番伝わりやすい方法を考えるという体験は、アートディレクターという仕事に生きてくると思います。
「人から聞いて、それを伝える」ということも大きな仕事の一つなので、アートを仕事にすることを志すのであれば、アートの世界に閉じこもったり、一人きりで作るという世界から一歩踏み出していく練習はしておいた方がいいかなと思います。
アートやデザインを志すと、「自分の世界」を作ることに注力してしまうことも。でも、自分一人の世界に閉じこもってしまっていては仕事としては成立しません。アートディレクターを目指したいという人は、コミュニケーション力に磨きをかけるトレーニングをしておくことも必要ですね。
【profile】株式会社クオラス コンテンツソリューション局クリエイティブ部 梅本千愛(ちえ)
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「アートディレクター」
はこんな仕事です
総監修的立場で、グラフィック広告のビジュアルに関する指示をスタッフに出すことが仕事。略称はART DIRECTORの頭文字を取ってAD。グラフィック広告とは、ポスターや中づり、新聞、雑誌、カタログなど、主に紙媒体を使ったコマーシャルのこと。アートディレクターは広告プランの企画段階から関わり、フォトグラファーやコピーライターなどとモデルの人選、写真やイラスト、キャッチコピーの方向性を固めて指揮を取る。いわば、デザインに関する決定権を持ってプロジェクトを牽引するリーダーだ。
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