【シゴトを知ろう】画家 編
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美大への進学を志す方の中には、一度は「画家」を夢見たことがある人もいるのではないでしょうか。クリエイティブな仕事ゆえに職業として成立させるのが困難なイメージが強いですが、現役の画家はどのようにしてこの職に就き、いかにして自身の作品を売り込んでいるのでしょうか。今回は大分県の別府を拠点に活動する新宅和音さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 画家1本で生計を立てるのは難しいが、好きなように絵を描くことができる
- 知名度を上げるためには、地道な営業活動も必要
- 創作活動の傍らで副業ができるタフさが必要
人に指図されず、自分の描きたい絵が描ける
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい
現在は平日に職業訓練に通って、その合間に油絵とアクリル画の創作をしています。また、土日は単発でフェイスペインティングのアルバイトをしており、イベント会場で来場者にフェイスペイントをしています。会場は主に別府なんですけど、たまに都内に派遣されたりもしています。
<一日のスケジュール>
8:30〜9:30 絵を描く
10:00 職業訓練校
17:00 授業終了
20:00 絵を描く
23:30 就寝
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
やはり、好きな美術に携わって、「人に指図されず、自分の描きたい絵が描ける」ということが一番です。今は地元の大分に戻って別府を拠点に活動しているのですが、別府市自体がアート系に力を入れていることもあって、創作活動はやりやすいですね。ちょっと歩けば海もあるし山もあるし、変な路地裏もあったりして、環境そのものがおもしろくて、常に刺激を受けています。あと絵が売れるかどうかは分からないですが、展示会は他のギャラリーの方や絵のディーラーさんが見に来てくれて出会いの場にもなって、楽しいです。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
画家だけで生計を立てようと思ったら、まずギャラリーで絵が売れないと難しいので、仕事にすることの大変さはあります。作品を販売するにしてもまず自分の知名度を上げないといけないし、都内でテイストが似ている他の画家さんとの合同の展示会を実施したり、デパートの企画展に参加したり、気に入ってもらえそうな画廊や出版社に持ち込んだりと、営業もやっています。
画家一本で生計を立てるのは難しい
Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?
実を言うと、美大への進学を決めた時点で周囲から「画家はやめろ」と言われていたし、自分でもならないだろうと思ってました(笑)。やっぱり画家1本で生計を立てるのが難しいんですよね。大学卒業後は院に進学して、一度アルバイトとして関わっているフェイスペインティングの会社で社員として働いたり、中学校で非常勤の美術教師として働いたりもしていました。教師時代は、生徒と接するのは楽しかったんですが、そもそも絵が好きじゃない子に教えたり、成績をつけたりするのが辛かったです。
「画家になりたい」とちゃんと考えるようになったのはごく最近ですね。イラストレーターやデザイナーだとクライアント(依頼主)ありきで制作しなくてはならないので、完全に自分の好きなように描くことのできる、画家という仕事を目指すようになりました。
Q5.大学では何を学びましたか?
「いろいろ勉強できるよ」というアドバイスもあって、グラフィックデザイン科を専攻しました。実際にグラフィックだけに留まらず、アニメーションとか立体とか、さまざまなことを学びましたね。ただ、これは私に限った話ではないのですが、イラストレーションの表現技法を学んだからといって、それが絵画に生かされるとは限らないんです。お互いの土壌に隔たりがあるので。
Q6. 高校生のとき学んでいたことが、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校は総合学科で、国立・私立・専門学校・就職と複数のコースがあって、私は美大進学コースのカリキュラムを選択していたんですけど、そこで油絵をじっくり学ぶ時間があったのはうれしかったです。大学進学後は一旦油絵から離れて、漫画を描いたり、ペンでイラストを描いたりしていたんですけど、結局好きな画家や漫画家の真似にしかならなかったので……。今ようやく油絵に戻った感じです。
「どうしても絵が描きたい」という情熱が必要
Q7. どういう人が画家に向いていると思いますか?
自分から人間関係を開拓できるくらいコミュニケーション能力の高い人かな(笑)。あとは、「どうしても絵が描きたい」という強い意志を持っている人ですね。正直な話、画家1本で食べていくことはすごく難しいので、絶対に美術と関わりたいという人、創作活動の傍らで副業ができるくらいタフな人じゃないと難しいです。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
漫画でも小説でも絵画でも音楽でも、高校生の時にいいと思っていたものは大人になってもきっと好きなはず、今のうちに自分の視野を広げて、たくさんの作品に触れてほしいですね。
やはり画家だけで十分な収入を得たり、生活を安定させるのは難しいそうです。しかし、自分をとりまく環境やその時々に得た感動、それらを反映させた自分の作品が鑑賞者に受け入れられること、そしてそれがあらゆる人々につながっていく喜びは、何事にも代え難いのではないでしょうか。
【profile】新宅和音
http://kazuneshintaku.tumblr.com/
この記事のテーマ
「デザイン・芸術・写真」を解説
デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。
この記事で取り上げた
「画家」
はこんな仕事です
絵を描くことを仕事としている人を指す。日本画や洋画を代表に複数のジャンルが存在。昨今は平面にこだわらず、デジタルも駆使したミクストメディア作品やインスタレーションを発表するアーティスト的存在の画家も増えた。描いた絵を画廊を介して売った収入だけで生活できる画家は決して多くない。コンテストへの応募、学校や絵画教室での指導、イラストレーター、似顔絵描きなどで生計を立てる人も多い。展覧会だけでなく、イベントでのライブペインティングや絵本、パッケージなどで作品を発表する人もいる。