【シゴトを知ろう】スタジオミュージシャン 〜番外編〜
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『【シゴトを知ろう】スタジオミュージシャン 編』では、ギタリストの坂本夏樹さんに、スタジオミュージシャンとして活動を始めるまでの道のりや、現在の活動、スタジオミュージシャンになるために必要な資質などについてお答えいただきました。とにかく自信を持って行動すること、その自信をつけるためには一にも二にも練習をし続ける、という坂本さんの信念が伝わったのではないかと思います。
今回は番外編として、スタジオミュージシャンならではの「あるある」などについてお話を伺いました。
この記事をまとめると
- 譜面の進め方が分かっていれば、音符を読めなくてもなんとかなる
- 「黒いシャツで来てください」というリクエストが多い
- 「願えば叶う」「言霊はある」という2つのことを覚えておいてほしい
音符を読めなくてもなんとかなる!
――スタジオミュージシャンに興味はあるけど、楽譜を読めないから無理かなあ、と思っている人もいると思うのですが、実際に楽譜は読めないとスタジオミュージシャンになるのは難しいのでしょうか?
いえ、そんなことはないです。もちろん、読めたほうがいいとは思いますが、最近は音符を読める必要はなくなってきているんです。というのも、だいたいコードで書かれているので、譜面の進め方をコードに沿って読めればある程度は演奏できると思います。その代わりに、だいたいフレーズが決められていることが多いので、それを耳でパッと聴いてコピーして弾けないといけません。
ギターのベストな状態を測って数値化、全部自分で管理している
――ご自身の体調管理も大事だと思うのですが、同じくらい楽器のコンディションを整えておくことも大変なのでは?
普通のギタリストはあんまりしないと思うんですけど、僕はけっこうこまめに調整しています。そのノウハウは持っているので。「弦高はどこで何ミリ、ここの箇所は何ミリ」という風に、ギターのベストな状態を全部測って数値化しているんですよ。だいたい1週間に1回全部それを測って、数値通りの状態を保てているかどうかチェックしています。僕は見た感じだいぶ大雑把で、プレイスタイルもロックな暴れっぷりなんですけど、じつはその裏側では細かく数値管理をしているんです。
――自分が得意ではないジャンルの音楽の演奏をしなければいけないこともあると思うのですが、そうした仕事への取り組み方や乗り越え方を教えてください。
まず、どんなジャンルでも、そのジャンルに合った定番の弾き方があるので、それは全部頭に入っています。なので、苦手なジャンルだとしても、「これだけ押さえておけばなんとかなる」というのはまず実践します。でもやっぱり、「気持ち的にはこれは好きじゃない」というのはどうしてもあるんですが、それをいかに楽しめるか。どこか好きになれるポイントを聴き込むことで探すんです。嫌いなものを嫌いで片づけるのではなくて、好きなところを見つけて、その音と少しでもいい付き合いができるように心掛けるということです。
――スタジオミュージシャンの仕事における「あるある」があったら教えてください。
ふと入ったお店でかかっていた曲を聴いて「このギターカッコイイ!」と思って聴いていたらじつは自分のギターだったりすることがありますね。自分のギターを自分でカッコイイと思ったことに恥ずかしくなることがあります(笑)。あとは、ほかのレコーディングでも同じフレーズを弾いていた、ということはたまにあります。それは録音し終わってチェックしているときに気が付いたりしますね。僕はよく「異弦同音」というフレーズを使うんですけど、「あ、またこのコンビネーションでやっちゃった」ということはよくありますね。
――スタジオミュージシャンのお仕事について意外と知られていない、知られざる事実やトリビアがあれば教えてください。
女の子のアーティストのバックでサポートをするときは、だいたい「黒いシャツで来てください」というリクエストが多いです。いわゆる「黒子」に徹してくれということだと思うのですが。なので、スタジオミュージシャンはみんな黒シャツを必ず持っているはずです(笑)。
「願えば叶う」「言霊はある」という2つを覚えておいてほしい
――最後に、お仕事の中で、一番の思い出や達成感を感じたエピソードについて教えてください。
最近、「いつかこのアーティストと一緒にやりたい」と思っていた人がいて、「この曲最高でこればっかり聴いてるんよ~」という話をしていたら、本当にその人から依頼が来たんですよ。そのレコーディングには全人生を賭けて取り組んで、すごくいい作品ができました。そのチームもすごく喜んでくれて、「最高のものができた!」と言ってもらえました。ファンとして聴いていた好きなアーティストのレコーディングに参加させてもらえて、しかもいいものができた、というのは最高に達成感がありましたね。
このときは、たまたま知人を介してご本人からご依頼をいただいて。これはもう、想いが届いたんだと思うんですよ。言霊とか想いというのは、物理的に伝わるものだと思うので、「いかに強く願い続けられるか」だと思うんです。「絶対、願えば叶う」というのは、高校生のみなさんに伝えたいです。「願えば叶う」「言霊はある」というこの2つは、スタジオミュージシャンを目指している人は覚えておいてほしいですね。
強く願っていたことが、いざ実現したときに、すぐ力を発揮できるようにするためには、日々の練習が欠かせません。31歳にして12年のキャリアを持つ坂本さんですが、「まだまだです」とあくまでも謙虚に、日夜スタジオミュージシャンとしての自分を高めて行っているようです。高校生のみなさんもぜひ自分の夢を信じて進んで行ってほしいと思います。
【profile】スタジオミュージシャン ギタリスト坂本夏樹
この記事のテーマ
「音楽・イベント」を解説
エンターテイメントを作り出すため、職種に応じた専門知識や技術を学び、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨きます。音楽制作では、作詞・作曲・編曲などの楽曲づくりのほか、レコーディングやライブでの音響機器の操作を学びます。舞台制作では、演劇やダンスなどの演出のほか、舞台装置の使い方を学びます。楽器の製作・修理もこの分野です。
この記事で取り上げた
「スタジオミュージシャン」
はこんな仕事です
アーティストのレコーディングに参加したり、CMソングのレコーディングに加わる楽器演奏者やバックグラウンドボーカルなどを指す。レコード会社などに属して活動する場合や音楽プロデューサーなどの人脈を生かして、会社に属さずに活動する場合がある。本人でなく、他のアーティストや企業広告用の作品に参加する形で演奏するため、音楽的なニーズも多様である。高い演奏能力はもちろん、初めてのミュージシャンたちとも即座に息を合わせることのできる音楽センスが求められる。用意された楽曲を演奏することが多いので、自分なりのアレンジを加えられることも評価につながる。