【シゴトを知ろう】スタジオミュージシャン 編
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音楽の演奏にまつわる仕事の中でも、高い演奏技術が要求されるのが「スタジオミュージシャン」です。色んなジャンルのアーティストから腕を買われてサポートを務めたりレコーディングに参加するスタジオミュージシャンを仕事にするのは大変そうなイメージもありますが、実際にはどのようなことをしているのかあまり知られていないかもしれません。そこで今回は、ギタリストとしてレコーディングやライヴで活躍するスタジオミュージシャン、坂本夏樹さんにお話を伺いました。
この記事をまとめると
- とにかく体調管理を大切にしなければいけない仕事
- テレビでアーティストのバックにいるギタリストを見て憧れた
- 「自分にしかできないことをいかにクオリティ高くできるか」が大事な職業
頭の中に弾ける曲を120曲ほどストックすることも!
Q1. 仕事概要と1日のスケジュールを教えて下さい
私はギタリストとして、ボーカルの方のバックでレコーディングやライヴをすることがメインの仕事です。この仕事を始めたきっかけとして携わったHOME MADE 家族から始まり、これまでにはシンガーソングライターの新山詩織さんやSakuさんとお仕事させてもらっています。また、チリヌルヲワカ、She Her Her Hersというバンドのメンバーとしての活動していました。現在はスタジオミュージシャン、プロデューサー、最近はソロで歌うことも始めているのですが、基本的にはレコーディングやライブでミュージシャンの後ろで演奏することがメインの仕事です。
<一日のスケジュール>
(レコーディングの日)
08:00 起床、メール返信
〜午前中 ギターの朝練、レコーディングの予習
13:00 スタジオでのレコーディング開始
20:00 レコーディング終了
24:00 帰宅、就寝
(ワンマンライブがある日)
13:00〜14:00 会場入り
〜17:00リハーサル
19:00〜21:00 ライブ本番
22:00 ライブ終了、解散
24:00〜25:00 帰宅、就寝
自分の中でリズムを作っておかないと体調を崩してしまうので、なるべく同じ生活リズムで過ごすようにしています。とにかく体調管理を大事にしていますね。
Q2. 仕事の楽しやさ・やりがいは何ですか?
スタジオミュージシャンは、年がら年中、いろいろな人たちと一緒に音を出す仕事です。その中での共通言語は音符とか音色しかないので、たくさんの人たちと音楽で会話できるおもしろさがあります。また、ツアーで全国を回ることもあるため、各地のことを知ることができ、おいしいものを食べることもできるのが魅力ですね(笑)。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
ツアーが何本も重なることが多いのですが、そうなると曲を覚えるのが大変ですね。去年(2015年)は3組のアーティストのツアーが被った時期があって、頭の中に絶えず弾ける曲を120曲くらいストックしておかなければいけなくて大変でした。
「どれだけ勘違いできるか」が今につながっている
Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?
中学1年のときに友だちと一緒にギターを始めたのですが、中学2年くらいのときに矢井田瞳さんのライブをテレビで観ていたところ、矢井田さんの後ろでギターを弾いていた西川進さんを観て、「この人、バンドのメンバーじゃないのにめちゃくちゃカッコイイ!」と思ったのが最初のきっかけです。そこで調べたら、「スタジオミュージシャン」という仕事があることが分かって、ギターを弾いて色んな人のバックで演奏する、というのがカッコイイなと思ったんです。
Q5. 高校卒業後は、どのようなことを学んできましたか?
高校3年生のときに、本当はスタジオミュージシャンになるために専門学校に行くはずだったのですが、ユニットでデビューすることになったんです。高校を卒業して上京して音源の制作も進んでいたのですが、いざ完成したところでそのデビューの話が頓挫してしまって(苦笑)。「どうしよう?」って困っていたときに、当時のレコーディングチームのメンバーが、「ギターもそこそこ弾けるし、スタジオミュージシャンやってみる?」って振ってくれたんです。
初めはHi-Timez(後のSpontania)のレコーディングに参加して、そのつながりからHOME MADE 家族のレコーディングに呼んでいただいて、気に入ってもらえたんです。3枚目のアルバム『FAMILIA』では曲作りから参加して、ほぼ全曲ギターで参加しています。それが大きなターニングポイントになって、声をかけてもらえるようになり、いろいろな仕事をさせてもらえるようになったんです。スタジオミュージシャンとしてのキャリアは今年で12年目になります。
Q6. 高校生のときに抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
無意識に取り入れていたことなんですが、中二病という言葉があるように中学高校のころって、とにかく「どれだけ勘違いできるか」だと思うんですよ。僕は当時スタジオミュージシャンになりたいと思うようになってから、「僕がスタジオミュージシャンになったら絶対この人たちよりすごいことができる」っていう勘違い、根拠のない自信に突き動かされていましたね。
「自分にしかできないことをいかにクオリティ高くできるか」というのが大事な職業
Q7. どういう人がその仕事に向いていると思いますか?
「とことん勘違いできる人」ですね。自分の心持ち次第だと思います。本当にミュージシャンというのは浮き沈みの激しい仕事なので。ツアーがある時期は華やかで忙しいですが、ツアーの合間や仕事がないときは、1、2日働いて、その後は5連休とかいうことがザラなんです。そうなってしまったときにいかに自分の心を保てるか、強く持てるかです。そういう意味では勘違いと紙一重だと思いますし、「自分を最高だと思って鼓舞し続けられる人」が向いているんじゃないかなと思います。ただ、その自信をつけるには実力をつける、実力をつけるには練習をし続けるしかないですね。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
スタジオミュージシャンって、「うまくないといけない」と思ってる高校生が多いと思うのですが、みんなが弾けることを弾けるだけでは全然おもしろくないと思うんです。それよりも、「自分にしかできないことをいかにクオリティ高くできるか」が大事な職業なので、みんなが弾けることよりもいかに自分の個性、好きなことをどのレベルまで突き詰められるか、ということを考えてほしいです。
スタジオミュージシャンの仕事を始めたてのころは、ミュージシャンのローディーとして裏方の仕事もしていたという坂本さん。そうした現場で体感してきたことは現在の仕事にも大いに生かされているようです。最近では新潟で行われた〈工場の祭典〉のレセプションで工場でライヴを行ったり、プロデューサーとして女性4人組ロックバンド「指先ノハク」の作品を手掛けたりと、活躍の幅を広げています。
「自分にしかできないことを突き詰めていく」坂本さんの活動は、スタジオミュージシャンを目指している人にとって指針になるものではないでしょうか。
【profile】スタジオミュージシャン ギタリスト 坂本夏樹
この記事のテーマ
「音楽・イベント」を解説
エンターテイメントを作り出すため、職種に応じた専門知識や技術を学び、作品制作や企画立案のスキル、表現力を磨きます。音楽制作では、作詞・作曲・編曲などの楽曲づくりのほか、レコーディングやライブでの音響機器の操作を学びます。舞台制作では、演劇やダンスなどの演出のほか、舞台装置の使い方を学びます。楽器の製作・修理もこの分野です。
この記事で取り上げた
「スタジオミュージシャン」
はこんな仕事です
アーティストのレコーディングに参加したり、CMソングのレコーディングに加わる楽器演奏者やバックグラウンドボーカルなどを指す。レコード会社などに属して活動する場合や音楽プロデューサーなどの人脈を生かして、会社に属さずに活動する場合がある。本人でなく、他のアーティストや企業広告用の作品に参加する形で演奏するため、音楽的なニーズも多様である。高い演奏能力はもちろん、初めてのミュージシャンたちとも即座に息を合わせることのできる音楽センスが求められる。用意された楽曲を演奏することが多いので、自分なりのアレンジを加えられることも評価につながる。