【シゴトを知ろう】日本料理人 編
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「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたのが2013年。近年日本料理の世界は世界中から注目が集まっています。
日本料理人とはどんなお仕事なのか、そして、どのような苦労や喜びを感じながらお仕事をされているのか。東京・渋谷の人気日本料理店「高太郎」の店主・林高太郎さんに伺いました。
この記事をまとめると
- 仕入れ、仕込み、接客、調理……。短いまかないの時間以外は立ちっぱなし
- バックパックを背負って海外へ! その時の経験が飲食業界へ進むきっかけに
- 価値観が真逆になる経験ができるのが「旅」。短期間でも異文化に触れてみて
お客様の「おいしい!」のために働くということ
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい
営業中は、まかないの20分間以外はずっと立ちっぱなしです。仕入れがある日は8時くらいに築地に行って、10~10時半くらいに店に戻って、仕込みまで休んでいます。
うちのお店は、居酒屋以上、和食割烹未満のような感じのお店です。客単価でいうと7~8,000円くらいでしょうか。割烹に行かれるような大人のお客様に普段使いで楽しんでいただける、おいしいお酒と楽しく過ごしていただける空間にこだわった、大人向けのカジュアルな和食のお店です。
<一日のスケジュール>
08:00 自宅から直接築地へ。仕入れ
10:00 休憩
13:00 仕込み開始
17:00 仕込み完了。開店までにまかないを食べる
18:00 開店
接客・調理 (途中20分間 まかないの時間)
26:00 閉店
26:30 帰宅
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
やはり、お客様がおいしかった、楽しかったと感じていただけることですね。そこに喜びを感じられなければ、なかなかこの仕事を長く続けていくことは難しいかもしれません。人に何かをしてあげられる喜び、それを楽しめるからこそというのは大きいと感じます。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
普通のサラリーマンの方と比べると、やはり休みが少ないですかね。週休1日で拘束時間もどうしても長くなると思うので、異業種の人から見れば、そういったところが大変だと思われるとは思います。ただ、やはり技術職ですから。やっただけ力がつくという部分を考えると、そこを惜しんだりはあまりしない人が多いかもしれないです。
自分が修行していた頃は、結構キツく指導されることもあったので、そういうところもあるのかな。ただ、自分が指導する側になってからは、感情的に指導するというやり方はしていないですね。そういうのも時代に合わせて変わってきていると思います。
一期一会の絆を深めるのが「食」。でも、まさか料理を仕事にするとは……
Q4. どのようなきっかけ・経緯でこの仕事に就きましたか?
大学を休学して、オーストラリアとかアジア、最終的にはトルコ辺りまで、海外をバックパックを背負って旅して1年間ほど回っていました。その頃は、インターネットも発達していなかったこともあり、安い宿に泊まる旅行者同士、「あの街に行くならここがおすすめ」とか情報交換をして盛り上がるのは、もっぱらレストランのこと。
偶然同じ宿に泊まったというだけの一期一会で、「一緒に食事に行こう!」ってノリになったら、憩いの場は当然レストランでした。人が集まって、ワイワイしている雰囲気がすごく好きだったんです。そこから飲食に興味を持ちましたね。
Q5. 大学では何を学びましたか?
経済学部で学んで、経営の授業なども取っていました。仕事はボランティアではないので、「どうやって利益を生み出すのか」ということを考えるというのは、大切なことだなと思います。
どんなジャンルの料理人にもいえることですが、自己満足だけで終わってしまうとなかなか上手くいかないと思います。お客様に喜んでもらうためには「お客様の目線」も忘れてはいけないし、経営者としての目線も持たないといけないなとは思いますね。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
漠然と、独立して仕事をしようとは思っていました。ただ、自分がまさか料理をする仕事に就くとは全く想像していなかったと思います。だから、職種や職業がまだ決まっていない人も、そんなに焦らなくてもいいと思います。
私は大学を卒業してからこの道に入ったので、調理系の学校に行くという頭はあまりなくて、現場が全てかなと。10年ほどお店で修行しましたが、最初は天ぷらの揚げ方すら分からなかったですから。
旅には体感して気付くことがたくさんあった
Q7. どういう人が日本料理人に向いていると思いますか?
やはりサービス業なので、人があるものですから。食べてくれておいしいと言ってくれる顔だったり、誕生日のためにご用意したものに対して喜んでいただけたり、そういうところに喜びを感じられないと辛いでしょうね。あと、強い意思がある人というのは向いていると思います。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
取りあえずコレだと思えることに出会えるまで、動いてみること。アルバイトなどで働くのも大切だと思います。
私がおすすめしたいのは、やはり旅に出てみることです(笑)。大学の勉強ももちろん大切ですが、国や宗教・文化など違う角度から見ると、価値観が真逆になることもたくさん経験してきました。旅には、学校では教えてくれない「体感して気付くこと」がたくさんあるんです。
日本にはモノもあふれていますし、自分がどういう人間か分かってくれている環境で生活していますが、旅に出て全く違う環境に身を置くと、誰も自分を知らない。仮にその国の言葉が分からなければ、食べる所や寝る所は、身振り手振りででも探さなくてはいけなくなります。
環境を変えてみるという体験は本当に重要だと思いますので、短期間でも全然構いません。ぜひ一度、異文化に触れてみてください。
長時間の仕込みや時には早朝の仕入れなど、「料理人として働く」ということには、料理を口にした人の喜びにつながる地道な作業をコツコツと行うという側面もあるのだということが改めてよく分かりました。
林さんのように、学生時代にしかできない体験として海外を見てみることで、より日本のよさや、自分自身が本当にやりたいことを見つけられるということもあるのではないでしょうか。
【profile】日本料理店「高太郎」 店主 林高太郎
この記事のテーマ
「食・栄養・調理・製菓」を解説
料理や菓子などの調理技術や、栄養や衛生などに関する基礎知識を身につけます。職種に応じた実技を段階的に学ぶほか、栄養士などの職種を希望する場合は、資格取得のための学習も必須です。飲食サービスに関わる仕事を目指す場合は、メニュー開発や盛りつけ、店のコーディネートに関するアイデアやセンス、酒や食材に関する幅広い知識も求められます。
この記事で取り上げた
「日本料理人」
はこんな仕事です
専門料理店や割烹、旅館・ホテルなどで日本料理をつくる仕事。料理人の中でも、特に日本料理人を指して「板前」と呼ぶこともある。懐石料理や精進料理、すし、天ぷら、うなぎなど、専門とする料理の種類によって仕事の内容はさまざまだが、一人前になるまで時間がかかる点は共通。修業時代は調理の準備や洗い物、まかない(料理人たち自身の食事)づくりなどが主な仕事となる。それらの仕事をこなしながら料理の技術を一つひとつ身に付けて、やがて一人前の調理人として店を任されたり、自分の店が持てるようになっていく。
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