【シゴトを知ろう】農業系研究・技術者 編

今回インタビューしたのは、農業系の研究所「国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構」で食品研究の仕事に携わっている鈴木彌生子さん。
「研究職」ときくと、「難しそう」「とっつきにくい」というイメージもありますが、実際はどうなんでしょう?
鈴木さんに普段の仕事内容や研究職に就いた経緯などを伺いました。
この記事をまとめると
- 「研究職」のやりがいを知る
- 時には思いきって方向転換する事も大切
- 最初から正解を見つけることを重視しなくても大丈夫
社会や人々の生活をより良くするための研究
Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えて下さい
研究所では「裁量労働制」という働き方が採用されているため、日によってスケジュールを自由に決めることができるんです。「裁量労働制」とは、簡単にいうと、研究所に何時に来ても、そして何時に家に帰ってもいいというもの。コアタイム(※フレックスタイム制で勤務している者が、必ず勤務しなければならない時間帯のこと)も設定されていないので、一日に1〜2時間しか研究所にいない日もあれば、7〜8時間ほど研究室で実験する日もあります。
<一日のスケジュール>
8:00 出社
午前中 研究・打合せ
12:00 昼食
午後 研究・打合せ
17:30 帰宅
Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
国の機関や民間企業の方たちからニーズをつかみ、協力して新たな技術を生み出すというのも私の仕事のひとつです。自分が開発に携わった技術が実用化されるというのはとてもうれしいことです。自分の開発した技術で検査が行われることで、自分の研究の成果が社会にきちんと還元されていると実感します。
Q3. 仕事で大変なこと・辛いと感じることはありますか?
私が所属している食品研究部門には、研究員が100名ほど所属しているのですが、食品にまつわる問題にはさまざまなものがあるので、場合によっては、一つの研究テーマを一人で担わなくてはならない状況にあります。私は食品の産地判別が専門ですが、現在は一人で研究を進めているんです。研究内容をより発展させるために必要な研究資金を得ることも重要で、農水省や文部科学省などの競争的資金へ応募します。、自分で提案書を作成し、プレゼンテーションすることもあります。その際、いかに自分の研究内容に魅力があるか伝えることに心を砕きますね。
高校時代に経験した実験の授業が、現在の仕事を選ぶきっかけに
Q4. どのようなきっかけ・経緯で農業系研究・技術者の仕事に就きましたか?
「食」に興味があったことに加え、成果がきちんと社会へ還元されるような研究がしたいと思い、大学院と3年間のドクターコースで、食品の産地判別を学べる学部を選びました。卒業後、民間の企業での研究職を経て、現在の職場に就職しました。
Q5. 大学では何を学びましたか?
自然化学ドキュメンタリーを好んで観るなど、もともと太古の時代に興味を持っていました。化学的なアプローチを通じてその当時のことを知りたいと思い、化学をつかって生命の起源などを探る学問「地球化学」を学ぶ学部に進学しました。
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
高校の選択授業で、一人ひとつずつ器具を与えられて、2時間くらいかけてしっかりと実験をしていたのですが、その時に化学ってすごく面白いなと、漠然と思ったんです。それが私が化学に興味をもつ大きなきっかけだったと思います。
Q7. どういう人が農業系研究・技術者に向いていると思いますか?
研究者には、もちろん研究に没頭できる集中力がなくてはだめですが、人と円滑にコミュニケーションできる能力も同じくらい求められると思います。自分の技術をプレゼンしたり、国の機関や民間企業の方たちと交流する機会もとても多いんですよ。
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします
なにか好きなことを一つでもいいから見つけて、突き詰めて調べてみてほしいと思います。そうするうちに、もっと専門的に学びたいと思うこともあるはずです。また、人生は一度きりですから、好きなことをした方がいいと思います。私は「化学」と「食」に興味がある、という動機で大学の学部を選択し、現在の仕事に就きましたが、好きなことを仕事にできているありがたさを日々実感しています。
インタビュー中、「研究においては、解答を得るために実験をしたり、文献を読んだり、というプロセスが重要です。壁にぶつかることも多々ありますが、最初から正解に辿り着くことにさほど重きは置かれていないんです」と鈴木さんから仰りました。進路においても同様で、最初から正しい道を選ぶことに固執しなくてもいいのかもしれませんね。試行錯誤しながら自分の進みたい道を見つけていくことで、学べることも多いはずです。
【profile】
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
食品研究部門 食品分析研究領域・信頼性評価ユニット
主任研究員・博士 鈴木 彌生子
この記事のテーマ
「動物・植物」を解説
生き物を取り扱う仕事には、動物や観賞用の植物に関わり暮らしに潤いを提供する分野や、食の供給や環境保全を担う農業・林業・水産業などの分野があります。また盲導犬や警察犬などの調教・訓練や水族館や動物園で働く選択肢もあります。この仕事をめざすには、動物や植物の生態や生育に関する専門知識を身につけ、希望する職種に必要な技術修得が必要です。
この記事で取り上げた
「農業系研究・技術者」
はこんな仕事です
農業における生産技術の向上を目的として研究・指導を行うのが主な仕事。新たな生産技術の普及を目指し、導入の手助けや地域特産品の開発などに取り組み、農家を支える立場として活動する。農業試験場などの研究機関ではさまざまな実験を行い、農協や農業団体に勤務して経営や栽培方法の指導にあたることもある。中には、官公庁の農業政策において農業を活性化させるための企画を考えたり、穀物の品質を検査したりする研究者、技術者もいる。
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