【前編】小学生から持ち続けた「ドラクエ愛」。
スクウェア・エニックス 青海亮太さんに聞いた好きなことを仕事にする秘訣
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2016年5月に『ドラゴンクエストヒーローズⅡ 双子の王と予言の終わり』をリリースし、「ドラゴンクエスト」シリーズの次回作への期待も高まる株式会社スクウェア・エニックスで、ゲームプロデューサーを務める青海亮太さんにお話を伺いました。小学生のときから「ドラゴンクエスト」に愛情を持ち続け、憧れの職業に就くまでには、どのようなストーリーがあったのでしょうか?
この記事をまとめると
- ゲームプロデューサーは、ゲームがお客様の手元に届くまでの全てに関わる職業
- 「ドラクエ愛」が青海亮太さんとスクウェア・エニックスをつなげた
- 好きなことを徹底的に追求することで将来が見えてくる
ゲームに関わる仕事をするのは、小学生の頃からの夢だった
――1日のスケジュールはどのような感じなのでしょうか?
どの職種でも同じだと思いますが、スケジュールは毎日違います。基本的には出社したらまずメールとタスクの確認をします。日中は打ち合わせが多く、夕方以降の落ち着いた頃にやっとデスクワークという感じですね。社外での仕事も多く、開発会社の打ち合わせや、キャラクターボイスの収録、プロモーションビデオ・テレビCMの撮影に立ち合うこともあります。ゲーム発売前の繁忙期には、夜遅くまで仕事をしていることもあります。
――ゲームプロデューサーとは、どのような仕事なのでしょうか?
いわゆるゲーム開発者やプログラマーと違い、プロデューサーは「何でも屋さん」なので、企画、お金の管理、宣伝広告、販売店の装飾など、ゲームがお客様の手元に届くまでのすべてに関わります。あと、プロデューサーによっては映像作品や、舞台の脚本・構成、関連グッズなどを監修することもあります。
――ゲームプロデューサーという仕事の魅力を教えてください
自分が作ったゲームで、お客様が遊んでいる姿を見たときは本当に感動します! ゲーム開発に携わる人に話を聞くと、だいたい発売日には量販店に行き、買っていく人たちの様子を見ちゃいますね。
お客さまが、どんな感じでレジに持っていくのか、その様子を観察しているんです。開発が大変だった分、ようやくお客様の手に渡った日は達成感がありますね!
――ゲームに関わる仕事を目指したのは、いつ頃なのでしょうか?
実は小学生のときに、「『ドラゴンクエスト』みたいなゲームを作る人になりたい」という将来の夢を書いていたんですよね。当時は「ドラゴンクエスト」が社会現象を起こすほど大流行していましたので、漠然とした憧れだったんですが。
中学校の進路の授業では、1年生のときに「ゲームデザイナーになりたい」と書いていました。そして、自分のおこづかいでゲームデザイナー就職本を買ってたんです。今考えると早すぎるだろって思いますけどね(笑)。
趣味でハマったことをアルバイトに生かした学生時代
――高校・大学で学んだことは仕事に生きていますか?
高校は普通学科でした。もともと小さいころから絵が好きで、小中学生のときに賞をもらったりしていたので、美術部に入りました。そこで油絵の楽しさに気付いて、美術大学で油絵学科を選択しました。
美術大学にはパソコンを使ったデザイン学科もありますが、デッサン力やモノの見方を鍛えるために、あえてアナログの油絵の道を選びました。それと並行で、入学祝に買ってもらったパソコンでデザインや画像制作ソフト、Webサイト制作ソフトの使い方を独学で勉強していきました。
そして、インターネットが普及しはじめた1995〜1999年頃、独学で制作したポストペットのモモのファンWebサイトが世間の注目を集め、いろいろな雑誌に掲載してもらえるようになったんです。当時100人規模のオフ会も主催してファンイベントを企画していましたので、今考えれば、大学生時代の趣味によって「集客・運営」を学べたと思います。
――アルバイトで学んだことは仕事に生きていますか?
大学の先生から「うちのデザイン事務所でアルバイトしてみない?」と誘われて、Webサイト制作のお手伝いをしていました。学校では油絵を描き、アルバイトではWebサイトを作るという「二足の草鞋(わらじ)」で2つのスキルを磨いていました。
アルバイトをした会社の中には、今や大企業になったIT企業もありましたが、当時はまだ数人の会社でした。「あのまま正社員として働いていたら、どうなっていたんだろう?」と思うこともあります(笑)。
ネットゲームをやりすぎて勉強が疎かになった時期もありましたが、それも含めて「趣味でハマったものをアルバイトに生かす」という流れが、今の仕事の下地になっているような気がします。
「ドラクエ愛」がスクウェア・エニックスと自分をつなげた
――就職活動はしていましたか?
就職活動は、実はあまりしていないんです。まずは先ほどのポストペットのファンWebサイトきっかけで知り合った、おもちゃ会社に入社しました。そこではキャラクターグッズやフィギュア、おまけ付きお菓子などを企画開発していました。
――新卒入社した会社で学んだことは何ですか?
おもちゃの企画開発のプロセスでは、職人さんとやり取りしておもちゃの原型を作ったり、中国の工場で必要な素材を作るために、月1回は中国出張をしていました。当時、フィギュアやおまけ付きお菓子が大ブームの時代だったので、いろいろなことを一度に学ぶことができてタイミングがよかったと思います。
この時期に、モノづくりの基礎を学びました。
――スクウェア・エニックスに入社した経緯を教えてください
おもちゃの企画開発を2年半くらいやったときに、「やっぱり昔からの夢であるゲーム作りがしたい!」と思ったんです。ちょうどそのとき、任天堂がポケモン関連のゲーム開発会社を立ち上げるという話を耳にしたんです。
その会社の社長は、偶然にもあの「ドラゴンクエスト」のメインプログラマーだった方でした。すぐにその会社に入社して、ポケモンシリーズのゲームやニンテンドーDSで本が読める『DS文学全集』、『ドラゴンクエストソード』などを作りました。
その後、「ドラゴンクエスト」のプロデューサーから、「一緒にドラクエを作らないか?」とお声をかけて頂き、スクウェア・エニックスに入社し、アシスタントプロデューサーを経て、今のプロデューサーという立場になりました。
小学生のときに「ドラゴンクエスト」で遊んでいなかったら、今の仕事はしていないでしょうし、「ドラゴンクエスト」と無関係なら、きっとスクウェア・エニックスにも転職していなかったはず。「ドラクエ愛」があったからこそ、今の仕事とつながれたのだと思います。
趣味でハマったものをアルバイトに生かした学生時代
――どんな人がゲームプロデューサーに向いていると思いますか?
1つは「新しいもの好き」の人ですね! 無関心な人がモノづくりに向いてないとは言いませんが、なかなか難しいと思います。逆に新しいものにすぐ飛びつく人は、モノづくりに向いていると思います!
もう1つは「妄想力」ですね。とにかく妄想できる人。「こんなものがあればいいのに」とか、「こんなことできたらいいな」とか、普段から夢を見られる人は向いていると思います。
これはゲーム業界に限らないかもしれませんが、仕事はゴールのイメージがすごく重要ですから、最初は大風呂敷を広げるくらい妄想してみて、徐々に終着点を見出していくことが大切です。誰も思いつかない妄想ができる人は強いですね(笑)。
好きなことを徹底的に追求してみてください
――高校生の読者に向けてメッセージをお願いします
とにかく自分の好きなことを徹底的にやってみることが重要だと思うんです。徹底的にやることで、いろんなものが見えてきたり、将来やりたいことがなんとなく分かってくるからです。
たとえばイラストを描くでもいい。創作じゃなくても、本、映画、音楽、スポーツ、何でもよくて、とにかく自分が好きなものを追求すること。中途半端にやるんじゃなくて、徹底的にやったほうがいいと思います。
高校生くらいのときに「将来なにをやりたい?」と聞かれてもわからないと思いますが、好きなことを見つけたら将来に対してスイッチが入りますよ!
まとめ
小学生のときに「『ドラゴンクエスト』みたいなゲームを作る人になりたい」という夢を書いていたとは、ちょっと驚きですよね。高校や大学、アルバイトでいろんな経験をしつつも、ゲーム開発に携わるという夢を諦めなかった青海亮太さんは、まさに夢の体現者。好きなことを追求することで、やりたい仕事の欠片が見えてくるのかもしれません。
【profile】青海亮太(あおみりょうた)
株式会社スクウェア・エニックス 「ドラゴンクエスト」シリーズ作品を手掛ける、ゲームプロデューサー。代表作は、『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』『ドラゴンクエストヒーローズII 双子の王と予言の終わり』ほか。ゲーム以外にドラゴンクエストのグッズやコラボレーション商品などにも関わる。
過去には、おまけ付きお菓子の玩具やフィギュアの制作を手がけるなど、ユニークな経歴を持っている。小学生のときに描いた「『ドラゴンクエスト』みたいなゲームを作る人になりたい」という夢を実現し、今に至る。
ドラゴンクエスト公式サイト:http://www.dragonquest.jp/
この記事のテーマ
「コンピュータ・Web・ゲーム」を解説
デジタル情報をつなぐシステム構築をはじめ、Webやゲーム、アニメーション、映画など、メディアやコンテンツを創り出す仕事です。コンピュータの設計・開発などを学ぶ情報処理系、アニメ・ゲームなどの制作を学ぶコンテンツ系の学問があります。ビジネスの現場で使われるアプリケーションスキルを身につける授業も役立ちます。
この記事で取り上げた
「ゲームプロデューサー」
はこんな仕事です
ゲームを開発するにあたり、予算やスケジュールを管理し、プロジェクトチームを統括する仕事。企画立案から携わり、顧客や外部スタッフとの交渉も行う。プログラミングやデザインなどゲームの制作に関する知識が必要で、売れるゲームを生み出すためには消費動向や市場のニーズを常に把握していなければならない。ゲーム開発に関する経験とリーダーシップが問われる仕事であるため、制作の現場で実務を積んでからステップアップするケースが一般的である。
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