後継者問題とは無縁? 栃木イチゴが「生産量日本一」に上り詰めるまで

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後継者問題とは無縁? 栃木イチゴが「生産量日本一」に上り詰めるまで

2016.08.29

提供元:マイナビ進学編集部

後継者問題とは無縁? 栃木イチゴが「生産量日本一」に上り詰めるまで

栃木といえば那須の避暑地や、寒さと雪が厳しい冬のイメージがあるかもしれませんね。その環境を活かしたある果物、それがイチゴです。日本一の生産量を誇る栃木イチゴですが、実はこの「日本一」、栃木人の長年の知恵と技術の粋の結晶なのです。

この記事をまとめると

  • イチゴの栽培に最適の自然条件を備えた栃木県
  • 旬以外の時期にもたくさん出荷できる甘くて美味しいイチゴを開発
  • イチゴ栽培農家は後継者不足とは無縁

栃木の土地にはイチゴを甘くする自然条件がそろっている!

日本でイチゴが食べられ始めたのは平安時代のこと。そのころのイチゴといえば、野生の「野いちご」でした。今のイチゴに比べて水気に乏しく、すっぱくて素朴な味わいだったようです。栽培して育てるイチゴは江戸時代末期にオランダから伝えられましたが、赤色が血を連想させ、当時の日本人にはなじまなかったそう。もっぱら鑑賞用とされていました。

栃木県のイチゴ栽培は昔から生産量を誇っていたわけではありません。昔はむしろ全国でも少ないほうだったとか。ではなぜ、栃木でイチゴの栽培が拡大していったのでしょうか。

イチゴは生育するのに適した気温が18度~25度ぐらいと言われます。暑さには比較的弱く、冷涼で穏やかな気候を好みます。栃木は内陸型の気候で、夏と冬、昼と夜に大きな気温差があり、この気温差もイチゴの甘さにつながる重要ポイントなのです。

冬の寒い時期にも真っ赤で甘いイチゴをたくさん食べて欲しい!

栃木はこのような自然環境だけに依存したわけではありません。自然環境における好条件を背景に、水田の裏作としても多くの農家が取り入れるようになったこと、JAやイチゴ農家、自治体が恊働して「とちぎのイチゴ」の品質向上やPRに注力し「とちぎのイチゴ」というブランド構築を積極的に展開したことなど、栃木をイチゴ王国に発展させていく、複数の原動力がありました。

1960年代に入ると、イチゴ栽培における好条件を背景に栃木は一大生産地まで成長しました。
しかし、クリスマスケーキ用などに使われる少し前の、もっとも販売価格が高くなる時期に出荷できるイチゴを作ることは長らくの課題でした。イチゴの旬は4〜5月。12月前に出荷できるようにするには促成栽培が必要なのです。

そのころメインに作られていたのは「ダナー」や「宝交早生」という品種。これらはあまり促成栽培にはなじまないものでした。それから何段階にも及ぶ交配と選抜が行われた末、誕生したのが「女峰(にょほう)」です。

続いて、1990年代に入り登場したのが「とちおとめ」。とちおとめは、女峰に比べて大ぶりで甘味が強いのが特徴です。ぐんぐん人気が高まったことに伴い、作付面積を増やしていき、とちおとめは、女峰に代わり栃木イチゴの女王の座につきました。

ライバルが増え、さらなる品種改良に取り組む

ところがその後、「茨城産とちおとめ」や「北海道産とちおとめ」など他県産のとちおとめの流通が解禁。さらには、とちおとめのライバルともいえる福岡の「あまおう」が登場したことで危機感がつのります。

そこで栃木県は、とちおとめの後継となる新たな品種の開発をスタートさせます。900組あまりを交配した10万株以上の中から選抜し、17年もの月日をかけた末、ついに2011年、イチゴ史上最強ともいえる品種が誕生しました。その名も「スカイベリー」です。

一粒の大きさが25グラム以上のものが6割を占め、値段も大きいものだと700円ほどするものもあります。そしてもちろん、注目すべきは値段以上に、その味わいです。糖度と酸度のバランスは絶妙で、これまでにない美味しさとの評判があり、需要も高まっています。

なお、栃木県の農業試験場は「いちご王国とちぎ」をさらに発展させることを目指し、平成20年に「いちご研究所」を開設。同研究所はイチゴに特化した全国初の研究施設だそうです。

ビジネスとしてのイチゴの将来性を見込み若手も活躍

農業や酪農には、朝から晩まで働く必要があり下手をすると盆も正月もなく、労働に見合った収入を得るのが難しいイメージがありますね。近年では従事者も減っており、日本の問題となっています。

しかし栃木のイチゴ農家に限っていえば、例外だといえるでしょう。イチゴ農家を廃業したという話はほとんど聞きません。それどころか、当たり前のように家業を継ぐ若者が多いといいます。

その理由は単純。イチゴは収益性の高い作物だからです。今では、イチゴはハウス栽培も多いことから天候による収益の変動が大きくありません。さらに1年のなかで決まって需要が増大して、価格が上昇する時期=クリスマスシーズンなどもあり、ある程度安定した年間収入を見込めます。

また、イチゴは設備投資に高額な費用がかかりますが、後継であれば親が築いた基盤のもと、安定して事業を営めます。さらには情報交換や相互支援ができる、若手後継者同士の心強いネットワークもあるとのこと。こうした背景のもと、さらなる規模の拡大や設備投資を積極的に行う若手も多いといいます。投資を上回る、億を超える売上を計上するイチゴ農家も出てきているそうです。

栃木県では、そんなイチゴの生産量日本一の座を維持するため多くの知恵や経験が注ぎ込まれ、試行錯誤が繰り返されてきました。さらにイチゴ生産は、手堅い成長株のビジネスとしても、また若手人材の活躍の場という面からも、注目すべき事業分野でもあります。

このように一つの商品、サービス、野菜や果物などの、ヒットの裏側に目を向けてその軌跡を探索してみると多用な側面が見えてきます。そこに農業経済学のテーマとなるヒントを発見できるかもしれません。

この記事のテーマ
農学・水産学・生物」を解説

私たちはほかの生物から栄養をもらって生活をしています。しかも、採集や狩猟だけではなく、食物を生産するという手段を得て、今日のように繁栄しました。人口増加や環境悪化などに対応し、将来的に安定した食料の確保を維持するためには、農業、林業、水産業などの生産技術の向上が必要です。さらに突き詰めて考えれば、動植物や微生物などの多様な生物に対する研究も重要です。自然との共生が大きなテーマになる学問です。

「農学・水産学・生物」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「農業経済学」
はこんな学問です

農作物の生産・加工・流通・消費という一連の経済活動を研究する学問である。世界レベルでの貧困問題から食料自給率などの国内問題まで、研究対象は幅広い。専門分野としては、個人農家や農業法人の事業経営について研究する「農業経営学」、国や自治体の政策と農業の関わりを研究する「農政学」、経済活動全体の農業との関係を研究する「農業経済学」、商品作物の特性に応じた流通を考える「農産物流通学」などがある。

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