約100年前から、ロボットが夢見られていた!

「ロボット」と言われて、何をイメージしますか? 人に近い形? それとも工場にあるような機械タイプ? いずれにしても、人それぞれさまざまなロボットを思い浮かべると思います。それだけ、現代の私たちにとって、ロボットは身近な存在になってきているのです。でも、そもそもロボットのはじまりとは?
この記事をまとめると
- ロボット誕生からまだ100年未満。空想科学小説の中のロボットの話。
- アトムとドラえもん。二つの日本生まれのロボットの話。
- アトムやドラえもんを目指した、リアル世界のロボット開発。
空想の中のロボットが現れたのは?
「ロボット」の誕生は、チェコのカレル・チャペックが1920年に発表した『R.U.R. (Rossum's Universal Robots)』という戯曲です。
ここで初めて出てきた「ロボット」は人造人間ですが、機械ではなく、むしろ人間のクローンのような存在で、知能はあるけど心はない労働用の存在。やがて、人間は労働の必要がなくなり、最後にはロボットに武器を持たせ……と物語は終末へと進んでいきます。ここで語られる話は、「ロボット」の存在意義や倫理観というより、むしろ「愛」かもしれません。邦訳版も発売されていますので、ぜひ読んでみてください。
次に「ロボット」に強い脚光を浴びせたのが、SF小説の巨匠アイザック・アシモフでしょう。彼の小説にはロボットが数々登場しますが、最初は1940年に発表した『ロビィ(Robbie)』。後に短篇集『われはロボット(I,Robot)』としてまとめられました。
ここで登場するロボットたちは、機械のロボット。そして、どんどん人間に近づくロボットに対して、アシモフは「ロボット工学三原則」を定めるのです。それは
(1)人間に危害を加えてはいけない
(2)人間に服従する(1に当たる場合をのぞく)
(3)1・2に反しない限り自分を守る、ということ。
日本のロボットのはじまりとは?
日本のロボットもご紹介しましょう。筆頭はもちろん、手塚治虫が描いた『鉄腕アトム』です。
1952年に発表された漫画『鉄腕アトム』は、世代を超え、国境を越えて愛され続ける不朽の名作。アトムはスーパーヒーローであり、天使のように優しい心をもった少年のように描かれています。学校にも通って、家族もおり、人権も認められていますが、人類を守るための戦いも避けられない運命。そこにロボットとしての悲しさがありますね。また、アシモフのロボット工学三原則に対して、手塚治虫も「ロボット法」を定めていますので、比べてみるとおもしろいかもしれません。
実は、天馬博士がアトムを作りあげた年は2003年。天才・手塚治虫の空想は、今の私たちではまだ追いつかないところにあるようです。
もう一つ、日本の有名なロボットと言えば、猫型ロボット『ドラえもん』。漫画の連載開始は1969年です。ドラえもんは22世紀の未来から来ていますので、まだ100年ほど先の存在ですね。このドラえもんというロボットは、どちらかと言えば「癒し系」。アトムのようなヒーローではななく、感情は持っていますが、人間の子どもに近い感じです。4次元ポケットはともかく、もし医療の現場などにこんな猫型ロボットがいてくれたら、どれだけ癒されるでしょうか。
リアルなアトムやドラえもんが誕生する日は来るのか?
そして、小説や漫画の中だけではなく、私たちと同じように両足で歩く人間型ロボットが誕生したのが2000年。HONDAが開発したASIMO(アシモ)です。そのプロジェクトの合い言葉は「アトムを作れ!」。研究室の本棚には、鉄腕アトムの漫画と球体関節人形があっただけという信じられないような話もあります。実際に目指したのは、私たち人間と同じ生活環境で役に立つロボットですが、その根底にはアトムがいたのです。
ドラえもんも負けてはいません。バンダイは2002年、「リアル・ドリーム・ドラえもん・プロジェクト」を立ち上げました。子どもたちと一緒に遊んでくれる本物のドラえもん(高度なコミュニケーション能力をもったロボット)を作ろうとしたのです。現在、プロジェクトは終了していますが、2004年に「ドラえもん・ザ・ロボット」、2009年には「My ドラえもん」という会話機能を搭載した商品を発売しています。高度なコミュニケーションとまではいきませんでしたが、約750語の言葉を話したり、表情や視線など言葉以外の方法でコミュニケーションを取ることができるロボットだったようです。
2014年、ソフトバンクモバイルとAldebaran Robotics SAS(仏)が発表した「Pepper(ペッパー)」がドラえもんに近いと感じる人も多いようです。それは、Pepperが感情認識パーソナルロボットだから。感情が変化するPepperは、家族の顔も覚え、相手によって反応も違うということですから、高いコミュニケーション能力を持っているといっていいでしょう。
他にも、アトムやドラえもんを目指すロボット開発者は後を絶ちません。しかし、現実世界にアトムやドラえもんが誕生するにはまだまだ時間がかかるでしょう。これから「ロボット工学」を学ぶ人たちにもチャンスがあるかもしれません。また科学エッセイを書いたり、科学ジャーナリストになって、空想科学が現実になっていく時代の流れを、人々に発信するというのも魅力的ですね。
●参考図書
『ロボット(R.U.R.)』 カペル・チャペック(岩波文庫)
『われはロボット』 アイザック・アシモフ(ハヤカワ文庫)
『鉄腕アトム』 手塚治虫(講談社 手塚治虫文庫全集)
『ドラえもん』 藤子・F・不二雄(小学館 てんとう虫コミックス)
●参考サイト
http://www.toyculture.org/robot.html
http://www.honda.co.jp/ASIMO/
http://www.itmedia.co.jp/news/0212/04/nj00_honda_asimo.html
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2014/20140605_01/
この記事のテーマ
「情報学・通信」を解説
情報通信産業には、通信業、放送業、情報サービス業、インターネット付随サービス業、映像・音声・文字情報制作業の5分野があります。中でも注目されているのが、インターネットに代表される情報通信工学。政治や経済、日常生活など、情報化社会のあらゆる面でますます必要とされる、活躍の場の広い学問です。
この記事で取り上げた
「システム・制御工学」
はこんな学問です
ロボット技術を機械・電子などの工学的視点から研究開発する学問である。研究分野は、製造現場で働く工作ロボットや福祉施設で活躍する介護ロボット、家庭で愛されるペット用ロボットなどを研究する「ロボット工学」、機械やロボットの動きを計算する「計測システム工学」、飛行機・鉄道などの大型の乗り物のコントロール技術を研究する「制御システム工学」など、幅広く生活や産業に密接につながっている。
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