江戸時代はフグが命がけの男性限定グルメだったらしい!
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なかなか口にできない高級魚の代表「フグ」。フグの旬は、秋の彼岸から春の彼岸までと言われています。現代では、いろいろな料理が気軽に食べられるようになっていますが、フグはまだ、特別な日のご馳走だと言えるでしょう。テトロドトキシンという猛毒を持っているフグですが、縄文人も食べていたとか。今回は、フグの歴史についてご紹介しましょう。
この記事をまとめると
- フグは大昔から食べられてきたが、危険なグルメでもあったという歴史。
- フグが「てっぽう」とも呼ばれる理由とは?
- プロの調理人になるステップと心構えについて忘れてはいけないこと。
フグ鍋は江戸時代では冬の楽しみだったけど……
実はフグは古くから食べられている魚です。古墳や貝塚からフグの骨がみつかっているため、日本人は縄文時代にはフグを食べていたという説があります。
江戸時代には、冬にフグ鍋を食べることは庶民の楽しみとなっていたようです。現在でもそうですが、フグ鍋の後の雑炊もおいしいものだったからです。でも食べることが許されているのは独身の男性たちだけ、と厳しく決められていました。女性や子どもは食べませんでしたし、男性でも結婚しているとフグは食べなくなります。というより、食べることが許されなくなるのです。
ここで、なぜ独身男性だけなのか、と気になるのではないでしょうか。フグのことを「てっぽう」と呼ぶ方もいます。「てっぽう」とは鉄砲の意味です。ここがヒント。フグはおいしいですし、旬である冬の楽しみでもあったのですが、怖い事実もあったのです。
江戸時代はまだフグのどこに毒があるかわかっていなかった
江戸時代のフグ鍋は、持ち寄った素人がさばいていました。つまり魚をさばくことができても、知識はなかったのです。ですから運が悪いと、フグの毒で死んでしまいます。「てっぽう」という名前は、当時の鉄砲がたまにしか当たらないことにひっかけたのです。
知識がない素人ですから、フグの毒がどこにあるのかはわかりません。そのためフグ鍋は江戸の独身男性の命がけのグルメであり、「危険なものを食べる勇気があるか」という度胸試しになっていたのです。
当たり前ですが、危険を考えて女性は食べませんし、子どもたちにも許しません。また結婚して養う家族がいれば、まず家族が食べることを許さないでしょう。危険なグルメはフグの毒がどの部位にあるかが発見されるまで続いたそうです。
現代では食品衛生法でフグの調理について厳しく定められていますが、今でも素人調理などでフグの毒で命を落とす方がいるそう。フグを食べるときは、正しい知識を持つプロの調理人がいるお店で食べるようにしましょう。
調理師という仕事で求められること
フグの調理ができる調理人は、「調理師」と「ふぐ調理師」の2つの資格が必要になります。調理師免許は、厚生労働大臣が認可した専門学校を卒業すれば取得可能です。また、飲食店などで2年以上調理業務に携わった経験があれば、国家試験に合格することで取ることができます。一方、ふぐ調理師の資格は都道府県ごとに異なっているので、他の県に移動するたびに取得し直す必要があります。
特にフグに関する法律は厳しくなっていますが、料理に関する仕事は食べる誰かの命を預かることにもなることは踏まえておくべきです。安全な料理法や食材をさばく知識も学んで、それを実際に行うことが、プロの調理人として忘れてはいけないことだといえるでしょう。
誰かのために料理を出すということは命を預かることなのです。安心して食べられ、しかもおいしいという料理が当たり前のようですが、実はかなり大変なことだと理解しておきましょう。味だけではなく、安全にもてなすことが調理人には求められているのです。
●参考文献
『大江戸美味草紙』杉浦日向子
●参考URL
http://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000000272_all.html
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/kanshi/s58_1202-2.html
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/hugu/
この記事のテーマ
「食・栄養・調理・製菓」を解説
料理や菓子などの調理技術や、栄養や衛生などに関する基礎知識を身につけます。職種に応じた実技を段階的に学ぶほか、栄養士などの職種を希望する場合は、資格取得のための学習も必須です。飲食サービスに関わる仕事を目指す場合は、メニュー開発や盛りつけ、店のコーディネートに関するアイデアやセンス、酒や食材に関する幅広い知識も求められます。
この記事で取り上げた
「ふぐ調理師」
はこんな仕事です
ふぐをさばき、ふぐ料理を提供する仕事。猛毒があるふぐを安全に扱い調理するためには、ふぐ調理師の資格が必要だ。調理師の有資格者で、ふぐ調理師のもとで2年以上実務経験をした人に受験資格が認められる(都道府県によって異なる)。また、都道府県の条例によって、ふぐ調理師の免許があれば、食品衛生責任者の講習は免除される。主な職場は、ふぐ専門店、料亭、割烹、旅館のほか、食品製造業や漁業関係など。調理師としての技能や責任度が高いため、資格を持つことで就職先の幅が広がる可能性もある。