物理に興味を持つには、どうすればいいの?
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理科の科目の中でも、特に難しく考えてしまいがちな教科が「物理」です。「一体、何のために勉強しているのかよく分からない……」「教科書に出てくるのは数式ばかりで、イメージが湧きづらい……」と感じ、苦手意識を持ってしまっている人は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、オンライン学習塾「アオイゼミ」で物理を教えている鈴木悠先生から、「物理に興味を持つための方法」について教えていただきました!
この記事をまとめると
- 身の回りの現象に「なぜ?」と疑問に感じることが、物理を学ぶきっかけになる
- 空が青い理由や虹が見える理由も、物理の観点から考えることができる
- 物理を学ぶことは、複雑な現象を単純化して、本質を見抜く力を養うことにつながる
物理を勉強すれば、身近な現象を解明できるかも!
――まず、物理に興味を持つにはどうすればいいですか?
鈴木先生(以下、鈴木):物理というと難しく考えてしまう人が多くいますが、実は私たちにとって身近に存在する学問です。なぜなら物理を学ぶことは、身の回りにある「なぜ?」の解明につながるからです。この「なぜ?」は、物理を学ぶきっかけになります。
例えば、スマホの画面って、どうして映るか不思議ではないですか? 物理の知識を積み上げていけば、その仕組みも理解できるというおもしろさがあります。もちろん、この仕組みを完全に理解することは高校レベルの物理ではできません。ただ、高校物理のレベルでも日常でなんとなくそういうものだと思ってしまっているいろいろなこと(例えばなぜコンセントは直流ではなく交流が使われているのか、など)が分かるようになります。そういうことを知っているだけでも、物理を学ぶモチベーションは上がると思うんですよ。
――物理を学ぶことによって得られるものが分かったほうが、学びがいがありますもんね。
鈴木:何も知らないまま、物理のはじめの授業で数式を見せられて、「物体の初速度がいくらで、加速度がいくらで……」と説明されても、きっと「つまらないなぁ」と感じてしまうと思います。でも、「これも身近な現象の謎が解明できるようになるための試練なんだ」という気持ちがあれば、「とりあえず頑張って勉強してみよう」と思えるようになるかもしれません。
空はどうして青いの? なぜ虹が見えるの? 物理の観点から説明してもらった!
――身近な現象で不思議に感じることとして、「空の青さ」があります。空は、なぜ青いのでしょうか?
鈴木:まず、光は全色混ぜると白色になる性質があります。太陽光が白っぽい光なのは、実は、太陽からは赤・青・黄・緑といった、ありとあらゆる色の光が絶えず降ってきているためです。そして、光の色は波長(波1つの長さ)によって決まるのですが、その中でも、波長の短い光(=青い光)は大気中の塵にぶつかった際に散乱されやすい性質があって、それで空は青く見えている、というわけです。このように身近な「なぜ?」にあたる空の青色は、実は光の波長が関係しているんですね。
――なるほど。空からさまざまな色の光が降ってきていることは、「虹」の色と関係がありますか?
鈴木:いいところを突いてきますね。関係あります。ガラスに対して斜めに白い光を当てると、虹色に光が分かれるという現象がありますが、虹はそれと同じような理屈です。雨が降った後に虹が見えるのは、ざっくりいえば、空気中の雨粒が、先述したガラスと同じ役割をしているからです。目に見えない大きさの水滴に白い光が入ってきて、虹色の光に分かれてそれが目に飛び込んでくる、というのが虹の原理です。
鈴木先生に教えてもらった、物理を学ぶ3つの目的!
――先生は「物理を学ぶ目的」は何だとお考えですか?
鈴木:物理を学ぶ目的は、私は大きく分けて3つあると考えています。1つ目が、「世の中の役に立つ科学技術の基礎を学ぶ」こと。2つ目が、「複雑な現象を単純化して、本質を見抜く力を養う」こと。そして3つ目が、「自分の興味の幅を広げるきっかけにする」ことです。
――では、1つ目の「世の中の役に立つ科学技術の基礎を学ぶこと」について詳しく教えてください。
鈴木:まず私たちの日常生活は、科学技術と切っても切れない関係にあります。そしてその科学技術は、物理の学問なしには成立しません。電化製品、鉄道、建築……、現代の世の中を支えるありとあらゆるものや技術が、今分かっている物理の法則を基礎としてつくられているといっても過言ではないのです。特に、物理を受験で使う人は、大学に進学した後、あるいはその後も、多かれ少なかれ科学技術に携わることになる人が多いと思います。科学技術に携わる人間として、科学技術の基本である物理学の知識と物理学的なものの考え方を学ぶことはとても大切なことだと思います。この様に、世の中の役に立つ科学技術の基礎を勉強することが、物理を学ぶ1つの目的です。
――2つ目の、「複雑な現象を単純化して、本質を見抜く力を養う」ことは、どういうことでしょうか?
鈴木:例えば、車が2台走っているとします。道路に立っている人から見れば、動いている物体は2つあるように見えます。でも、片方の車に自分が乗っていた場合には、自分から見える視界が大きく変わりますよね。自分が動いている車に乗っているわけだから、自分から見て動いている物体は1個に減るわけです。
この例では意図がうまく伝わりにくいと思いますが、視点を変えることによって、一見すると複雑な現象が単純な現象に置き換えられたり、そのことによって運動の本質が理解できたりします。そういった物事の本質を見抜く力を養うことも、高校物理の目的の一つです。
――最後に3つ目、「自分の興味の幅を広げるきっかけにする」とはどういうことでしょうか?
鈴木:これは、理科全般に言えることですが、理科を勉強することによって今まで自分が気付かなかった楽しさに出会い、それによって高校卒業後の進路選択のきっかけになるかもしれません。例えば、物理でいえば「今まで電気にはまったく興味がなかったが、電磁気を習ったらすごく楽しかったから電気電子系に進学しよう。」だとか、「今までは力学には全く興味がなかったが、力学を習ったらすごく楽しかったから、力学をフル活用する機械工学科に進学しよう。」だとか、そういった具合でしょうか。このように、自分の興味の幅を広げるきっかけにすることも、高校物理の目的の一つです。
物理を難しく考えがちな人でも、世の中の「なぜ?」の仕組みを知ることにつながる学問だと思えば、きっと勉強のモチベーションも上がるはずですよ!
――ありがとうございました。
つい難しく考えがちな物理ですが、勉強していくうちに身近な現象の謎が解明できるかもしれないと考えると、やる気も湧いてきますね。私たちの生活に欠かせない科学技術の基礎を支え、また世の中のさまざまな「なぜ?」の解明につながる、物理という学問。ぜひみなさんも、身近な現象や物事をきっかけに、物理への興味を深めてみてくださいね!