気になる社会人にインタビュー!
第71回:プロバスケットボール選手に聞いてみた10のコト!

部活を熱心に頑張っている人の中には、将来、プロのスポーツ選手を目指している人もいると思います。憧れの選手のように、いつか自分もプロとして活躍したい!と、日々練習に励んでいるのではないでしょうか。
多くの人々を魅了するプロ選手ですが、競技を行うだけでなく、チームのため、そして試合に勝つために、普段からさまざまな活動を行っています。
そこで今回は、プロバスケットボール選手として活躍する、「東京八王子トレインズ」に所属する兼子勇太選手に、プロのスポーツ選手としての活動について詳しくお話を伺いました!
この記事をまとめると
- 競技や練習に取り組むだけでなく、体や食事のケアも欠かせない
- 自分個人のプレーよりも、いかにうまくチームプレーを行えるかが大事
- 普段の練習では、フォワードとして点を決めるイメージを染みこませる
チームとして競技を行うことはもちろん、普段から体のケアも欠かせない
Q1. プロ選手としての、普段の活動について教えてください。
「私はプロバスケットボール選手として、八王子に拠点を置く『東京八王子トレインズ』に所属しています。プロ選手の活動は、リーグ戦を戦い抜いていくシーズン中と、リーグ戦がないオフシーズン、主にこの2つに分かれます。現在(7月)は、今年の10月1日から始まる新リーグ、通称『B.LEAGUE』に向けて、チームで練習を行ったり、コミュニケーションを深めたりしているところですね。これから8月までチーム練習をみっちり行い、9月からはプレマッチ(リーグ開幕前の試合)をこなし、新リーグ開幕を迎えます。私にとっては3年目のシーズンです。
リーグが開幕すると、毎週末、土・日曜日の2日間が試合となります。試合当日は、私の場合は会場の雰囲気を知るために、早めに会場に訪れてシュート練習をすることがあります。その後、体をほぐしたり、ポジションごとに練習を行ったり、チームでウォーミングアップを行い、そして試合を行います。試合を行う会場は全国のさまざまな場所にあるので、試合によって全国各地を飛び回っています」
Q2. 試合がない日はどのように過ごしているのでしょうか?
「試合がない平日のうち、月曜日は休み、火〜金曜日はチーム練習日となります。そのうち、試合で遠征する時は、金曜日が移動日にあたります。チーム練習は午前中に行われるので、私の場合は、午後は夕方ごろまでジムでウエイトリフティングを行うことが多いですね。このウエイトリフティングは、怪我をしないためのケアの一つでもあります。例えば筋肉を大きくしたり、ただつけるのではなく、スポーツに必要な筋肉を鍛えることによって、試合終盤や疲労がたまってきた時に力を発揮することができます。また、ウエイトリフティングをしていないと、選手同士の激しいぶつかり合いや、疲労がたまってきた時に怪我のリスクが高まります。新リーグは5月まで続きますし、スポーツ選手は体が資本ですので、怪我をしてしまっては選手活動を続けられません。そのため休日でも、チームメイトと一緒にアイシング(氷や水などを用いて体を冷却すること)をしたり、銭湯の水風呂に入ったり、体のケアをきちんと行っています。
リーグ戦が終わった後の5月から6月にかけてがオフシーズンになり、チームが選手との契約を行うための交渉期間になります。その期間は、チームとして試合や練習はなくなりますが、地元の小学校や保育園に訪問して、子どもたちにバスケットボールを教えるなど、シーズン中にも実施している地域貢献活動を引き続き行っています」
Q3. 実際にプロ選手になるまで、どのような経験を積まれてきたのでしょうか?
「私がバスケットボールを始めたのは小学校5年生の時です。小学校のチームや中学校のバスケ部は強くなかったのですが、高校は現在のチーム、東京八王子トレインズの拠点と同じ、八王子にある強豪校に入学することができ、毎日チームメイトとともに3年間たっぷり練習を積み重ねました。登校時間の前に学校に行って朝練を行い、昼休みには昼練、放課後には夜練と、とにかく練習に励んだ日々でしたね。その結果、都内2位、そして全国大会にも出場できたのはいい思い出です。大学進学を考えた時も、やはりバスケットボールをちゃんとやりたかったので、6校ほど自分の目で見て練習にも参加させてもらい、その後、同じく八王子にある大学に進学し、同校のバスケ部に入部しました。
大学後半になると、企業に所属してバスケットボールを続けること、つまり実業団へ進む道を考えたのですが、よりバスケットボールと向き合いたいと考え、徐々にプロを目指したいと考えるようになりました。そして、4年生の冬にプロチームのスカウトが参加する合同トライアウト(適性検査・試験)を4つほど受け、そこで山形に拠点を置くプロチームから声がかかり、晴れてプロ選手になることができました。そのチームでは1シーズンを経験し、その後、去年立ち上がったばかりの東京八王子トレインズのチームの初期メンバーとして加入します。そして今年の10月1日に、2年目のシーズンを迎えます」
自分個人のプレーよりも、チームとして勝つことがなによりも重要
Q4. プロ選手として競技を行う中で、魅力ややりがいを感じるのはどんなときですか?
「バスケットボールはチームで戦うスポーツなので、やはりチームが勝った時が一番盛り上がりますし、競技のやりがいをもっとも感じる瞬間です。もちろん自分個人のプレーも大事ですが、その良し悪しよりも、いかにうまくチームプレーを行えるか、チームとして勝つことができるかが重要です。長いリーグ戦では、チームの好調・不調の波もありますが、『波に乗っている』ことをチームメイトと分かり合える時は、本当にいい雰囲気になります」
Q5. 競技に取り組む中で、普段から心がけていることがあれば教えてください。
「私のポジションはフォワードなので、チームが勝つためには、とにかく点を決めることが求められます。そのため、普段のシュート練習もただこなすだけでなく、意識的に行うように心がけています。例えば、練習の時にシュートが入りづらいならば、あえてゴールに近寄ってシュート練習を行い、点を決めるイメージを染みこませます。そうやって、自分の気持ちをうまく乗せていくようにしています。
競技や練習、体のケアのほかに、食事にも気を遣っています。食事の栄養は体づくりに影響を与えるので、プロ選手になってからは、脂っこい食べ物はほとんど摂らなくなりました。その代わりに、野菜や豆腐を食べることが多いです。また、『ROOMEAT(ルーミート)』というカンガルーの肉もよく食べるのですが、これは体脂肪燃焼と筋肉増強効果があると言われています。このように、体へよりよい影響がある食材を選んで食べています」
Q6. これまでの選手生活の中で、一番の思い出を教えてください。
「東京八王子トレインズにとって記念すべき最初の試合にあたる、昨年の開幕戦のことです。その日の試合は接戦だったのですが、終盤に私が3ポイントを決め、最後の最後に逆転し、チームにとって初めての勝利をもぎとることができました。ホームの八王子にある会場で試合が行われ、地元のお客さんも多くいらっしゃってくださり、たくさんの方に喜んでいただけたのは最高の思い出です。私たちも『ホームの初戦だから、絶対勝たなきゃ』と意気込んでいた試合だけに、勝利した瞬間、ほっと胸をなで下ろしました」
Q7. 逆に、今後につながる教訓となったできことがあれば教えてください。
「私は『3x3(スリー・バイ・スリー)』という、3人制のバスケットボールもプレーしていて、以前、U-24(24歳以下)の日本代表として、ブラジルで行われた世界大会に参加したことがあります。その大会が開かれた会場では、『こんな場所でプレーするの!?』と思ってしまうぐらいコートの環境が悪かったのですが、そんな中、一流とされる他国の選手たちが言い訳せずにプレーしている姿には驚かされました。どんな状況でも合わせられることが一流なんだなと、私の中で大きな教訓になったできごとです」
文武両道を心がけることが、プロの道につながる
Q8. オフシーズン中に行われている地域貢献活動について、詳しく教えてください。
「チームとして八王子市内の保育園や小学校を訪問し、子どもたちと一緒にバスケットボールを行っています。私が所属する東京八王子トレインズには、『子ども達に夢と未来を!』というスローガンがあるのですが、市内の全校へ訪問し、子どもたちにバスケットボールを楽しんでもらうのが目標です。小さなお子さんだと、競技としてバスケットボールを楽しむのはまだ難しいので、一緒にボールの受け渡しをしたり、ゴールに向かって投げてみたり、まずはプレーする楽しさを実感してもらいたいと思っています。また、小学生向けのスクールでは、より実践的な指導を行っています。東京八王子トレインズとして、ゆくゆくは中学生の指導も行えるようになりたいですね」
Q9. 高校時代はどのように過ごしていましたか?
「とにかく部活漬けの毎日でしたが、今振り返って思うことは、勉強ができないと、スポーツもできないということ。これは当時の先生も言っていました。テスト前の期間は部活が一時的に休みになりますので、当時の私もとにかく勉強に励みました。テストで赤点を取ると、補習講義があるので部活に参加できなくなり、試合に出るチャンスも減ってしまうからです。今、もし高校時代の自分にアドバイスできるなら、毎日の部活が大変でも、先生の授業をちゃんと聞いたり、日々ちょっとずつ復習したり、少しずつ学習を積み重ねていってほしいなと伝えたいです」
Q10. プロバスケットボール選手を目指している高校生へ向けて、一言メッセージをお願いします。
「学生時代は部活にのめり込みがちですが、私は文武両道でいることが、プロへの道につながると考えています。部活と勉強、両立は大変だと思います。でも、学校や部のルールがある中でチャレンジすることは、進路決定をはじめ、きっと未来の自分にとって役に立つはずです。
また、進路で迷っている人は、部活に参加できる大学もあるはずなので、まずはぜひ大学へ足を運んで、学校や部活の雰囲気を体験してみてほしいです。自分の目で見ること、自分からアクションを起こすことがなにより大事です。自分にとってよりよい場所でさまざまな体験をすることが、プロ選手の道にきっとつながっていくはずです!」
普段の競技を行う以外にも、体や食事のケアが大事だという兼子選手。このようにプロバスケットボール選手は、私たちの目に見えないところでも、さまざまな努力を行っています。そしてそれが、競技そのもの魅力や子どもたちへの夢へとつながっているのでしょう。
プロ選手の活躍をその目で見たい人は、まずは最寄りの会場で行われている試合にぜひ足を運んでみてくださいね!
【取材協力】兼子 勇太 選手
兼子勇太選手公式Twitter
兼子勇太選手公式Instagram
兼子勇太選手公式Facebook
東京八王子トレインズ
ROOMEAT(ルーミート)
この記事のテーマ
「健康・スポーツ」を解説
スポーツ選手のトレーニングやコンディション管理に関わる仕事と、インストラクターなどの運動指導者として、心身の健康管理やスポーツの有用性を一般に広める仕事に分かれます。特に後者は、高齢化や生活習慣病が社会問題化する中、食生活や睡眠も含めて指導できるスペシャリストとして需要が高まっています。
この記事で取り上げた
「プロスポーツ選手」
はこんな仕事です
野球やサッカー、ゴルフ、ボクシングなど多種多様なスポーツ分野で、プロとして活躍する仕事。試合や大会でよい成績を残せるように日々トレーニングを積む。また、けがや病気をしないように体調管理をすることも仕事の一つだ。実力主義の面が大きく、結果を残すためには厳しい競争が待っているが、一流選手になると世間からの注目が高まり、やりがいに直結するだろう。プロスポーツ選手になる方法は競技によって異なるが、スカウトされるケースや入団テストを受けるケースが一般的。また、ボクシングなどはライセンスが必要になる。
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