美しいだけじゃない! 富良野のラベンダー畑に隠された歴史
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北海道富良野のラベンダー畑は、鑑賞するだけでは物足りない! 美しいラベンダーですが、もともと観光目的ではなく、ある目的で栽培されていたんです。
この記事をまとめると
- 明治に始まる北海道の開拓史の中での、富良野の「ラベンダー畑」創成期。
- 「ファーム富田」がラベンダー農家から香水を生産するに至る道のり。
- 調香師という仕事、そしてその第一歩となる香料化学という学問の話。
一面のラベンダー畑。美しい景色に至る歴史とは?
北海道の初夏の観光に、富良野のラベンダー畑は外せません。まぶしいくらいの紫色のじゅうたんは、リピーターもいる人気スポットとなっています。しかし有名になったのは、ここ30〜40年くらいのこと。「美しい」だけではない、富良野のラベンダー畑の歴史をひもといてみましょう!
その歴史は1903年(明治36年)から始まる北海道開拓史の一つ。ラベンダーの栽培が始まったのは1937年です。今では観賞用としての役割が大きいといえるラベンダーですが、最初は化粧品に使われる香料の原料として栽培されたそうです。フランスから種を取り寄せ、たくさん栽培できたら、今度はラベンダーオイル作り。何もなかった北海道の大地が紫色に染まり、産業として成り立つまでには、開拓の苦労が詰まっているといえますね。
●参考URL
http://www.farm-tomita.co.jp/history/
ラベンダーオイルの販売からオリジナル香水へのビジネス展開
では、日本最大級で、有名なラベンダー畑を持つ「ファーム富田」を取り上げましょう。ここでは先駆者の後を追うように、1958年から本格的な栽培が始まりました。しかし、順風満帆な日々は続きません。安価な輸入品に押されて、ラベンダーオイルの需要が急速に減っていったのです。その代わり、ラベンダー畑はその美しさから、次第に観光客が集まるようになったそう。
さらに、ここで大きな転機が訪れます。
「ラベンダーオイルを使って、自分達で製品化すればいいのだ!」と考え、まずは手頃なポプリやサシェ(匂い袋)、さらに石けん、ついにはオリジナルの「香水」を発売。いまや「ファーム富田」の人気商品となっています。その歴史を辿れば、古代エジプトから、最高峰の香水を生み出す現在のフランスまで。「香り」はビジネスになると同時に、文化であるともいえます。
●参考URL
http://www.farm-tomita.co.jp/
世界には、一流の香りの仕事がある!?
香りを作る仕事を「調香師(パフューマー)」と言います。食品や化粧品など、みなさんの身の周りには香りがあふれていますが、このような香りは、調香師が香料を組み合わせて新しい香りを作っているのです。その中でも特別なのが"香水"を作る調香師。これが実に狭き門。世界の有名ブランドの香水を手がけた調香師は男性の方が多いくらいで、フランスでは女性だけではなく男性にとっても憧れの職業の一つなのです。
では、どうしたら調香師になれるかと言えば、特に資格はありませんので、学歴や実績を積み重ねるしかありません。学問のジャンルはズバリ「理系」、しかも化学です。センスで勝負できる甘い世界ではないかもしれません。「香料化学」という言葉があるくらいで、調香師のノートは香りの化学構造式がびっしり。ちなみに、日本の調香師として活躍した資生堂の中村祥二氏は、農学部農芸化学科を卒業しています。一流の調香師を目指すのなら、基礎化学や農芸化学、薬学なども役に立つかもしれません。深く学びたい人は、留学をして研究してもいいかもしれませんね。
※『調香師の手帳 香りの世界をさぐる』 中村祥二 著(朝日文庫 2008年刊)
この記事のテーマ
「美容・理容・メイクアップ」を解説
美容師や理容師、メイクアップアーティストなど、確かな技術と感性を備えた「美」の専門家を目指します。理容師や美容師の国家資格取得を目指すほか、それぞれの職種に応じた技術力や表現力の習得、接客能力を身につけます。従来のように美容室や理容店で働くだけでなく、高齢者や障害者のもとへ出張する技術者へのニーズも高まっています。
この記事で取り上げた
「調香師(パフューマー)」
はこんな仕事です
数千種におよぶ香料を巧みに扱い、香水や化粧品、トイレタリー製品などに使用される香りを創作する仕事。大学の理系学部か調香師養成コースのある専門学校を卒業し、香料会社や日用品メーカーの研究開発部門で働くのが一般的。調香師の国家資格は存在しないが、関連する資格に国家資格の「臭気判定士」、調合や模倣の技術および専門知識を審査する民間資格の「日本調香技術師検定」がある。調香師には安全性や安定性を裏付ける化学、薬学、生物学の知識に加え、かぎ分ける能力と芸術的センスが求められる。