文学作品を読むのがさらに楽しくなるポイントって?

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文学作品を読むのがさらに楽しくなるポイントって?

2016.07.15

提供元:マイナビ進学編集部

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文学作品を読むのがさらに楽しくなるポイントって?

国語の授業を受けていて、つい眠くなってしまった経験は誰にでもあるかもしれません。過去の文学作品を読んでいても、なかなか頭に入ってこないという人もいるのではないでしょうか。

今回は、「文学作品って、どう楽しめばいいの!?」と感じている高校生のために、オンライン学習塾「アオイゼミ」で国語を教えている光武克先生に、文学作品を読むのがさらに楽しくなるポイントについて教えていただきました!

この記事をまとめると

  • 「作者の視点」「作品の時代背景」を知ることが、文学作品を楽しむ秘訣
  • 当時の社会背景と文学のあり方のつながりに気づくこともできる
  • 登場人物の思考を追体験することが、文学作品を読む面白さ

文学作品に興味を持つために、作家の視点や時代背景を知ろう

「作家そのものや、作家が生きた時代といった背景について知ることが大切」だと話す光武先生

「作家そのものや、作家が生きた時代といった背景について知ることが大切」だと話す光武先生

――国語の授業では、さまざまな文学作品が扱われます。人によっては退屈に感じてしまう人もいるかもしれませんが、どうすれば楽しみながら読むことができるのでしょうか?

光武先生(以下、光):私は、「つまらない」と感じてしまうのは、文学作品の「鑑賞の仕方」を知らないからじゃないかなと思っています。

文学の世界は、多くの人にとって自分の身近には存在しない世界であることも多いです。日常生活の中で予想外の出来事に出会った時、自分の感覚や感性が揺さぶられた経験は誰もがあると思いますが、このように知らない世界を体験した時って、ものすごくおもしろいですよね。文学作品を通じてその面白さを体験するには、まだ知らない世界に近づくために、ただ作品を読むだけではなくて、作家そのものや、作家が生きた時代といった背景について知ることが大切だと考えています。

――なるほど。では、具体的に教えていただけますか? 例えば教科書にも載っている、芥川龍之介の『羅生門』は、どのような背景があって生まれた作品なんでしょうか?

光:まず芥川の作家性を説明すると、彼は「理知派」と呼ばれる作家のグループに分類されます。『羅生門』が書かれた当時は、文学界において「ロマン主義」と「自然主義」という大きな流れの対立がありました。ざっくり言ってしまうと、「ロマン主義」は「理想の追求」です。現代に置き換えると、「OLが毎日おしゃれなレストランでスパゲッティを食べる」といった、ドラマのような世界観。キラキラしたあこがれの世界を描いていこう、という文学の流れです。

そして、それを「嘘だ」と考える人たちもいました。それが、「自然主義」と呼ばれる考え方につながります。とにかくリアルな「本音」を描いていく。でも、きれいな本音じゃダメなんですよ。「普段いいことしている人でも、裏ではこんなことしているんだよ」っていうのが、日本人は好きじゃないですか(笑)。「ドロドロした内面こそが真実の姿」、それを描いていく方向性が「自然主義」なんです。

そうした対立がある中で、芥川はどちらにも属さないんですよ。「どっちもバカバカしいでしょ」っていう姿勢なんですね。理性的な文脈の中で、あるべきものを構成し直すっていう観点で、芥川は作品を作っているんですよね。たとえば教科書に採用されている「羅生門」の場合だと、下人の行動を通じて「エゴイズム(利己主義)」が描かれていることが分かります。ですから、芥川は「エゴイズム」がもっともきれいに示せる設定として、「羅生門」という題材を選んだわけです。下人の行動は一見すると、良心が芽生えているようにも見えますが、老婆に対する詮索が好奇心であるとするならば、「自分のことしか考えない利己的な人間のあり方」を彼の行為が示していると考えて妥当といえるでしょう。芥川におけるこうした文学史的な位置は、封建的な社会を批判し、ただ近代化を喜ぶ「ロマン主義」とも、真実を追求する中で自己の告白体という形で私小説となっていった「自然主義」とも異なります。こういった作家背景や歴史の中の文脈を知ると、何度も目にした『羅生門』の言葉がまた違って見えるんじゃないかなと思います。

清少納言は、ちょっと暗めのアラフォー女性!?

「当時の社会背景と文学のあり方っていうものをつなげてみると、作品の鑑賞の仕方が変わってくる」と話す光武先生

「当時の社会背景と文学のあり方っていうものをつなげてみると、作品の鑑賞の仕方が変わってくる」と話す光武先生

――では、『源氏物語』については、どんな背景があるのでしょうか?

光:『源氏物語』では、主人公の源氏が、たくさんの女性に対して手を出していきます。もちろん、現代人の僕たちからすると不適切に見える行為です。でも、どうして彼は、作中において多くの女性から受け入れられる、あこがれの存在だったのでしょうか? 

それも、時代背景を考えると分かります。作品が書かれた当時は平安時代です。そのころは、政略結婚が一般的でした。摂関政治(※)が全盛期ですから、誰と結婚するかで人の一生が決まるわけです。つまり、自由な恋愛はほとんどできなかったんじゃないかと考えられるんですよね。だからこそ、文学の中であこがれの存在を描いたのではないでしょうか。

そう考えてみると、ドロドロの政治闘争に明け暮れた摂関政治の時代だからこそ、文化の面では、雅(みやび)さを重んじようとする貴族たちの心が見えてきます。当時の社会背景と文学のあり方っていうものをつなげてみると、作品の鑑賞の仕方が変わってくるんですよね。

※摂関政治……平安時代に、藤原氏という貴族が行った政治。自分の娘を天皇と結婚させ、生まれた子どもを天皇にたて、天皇が幼少の時には摂政、成人してからは関白として政治の実権をにぎった。

――『枕草子』も作者の視点や時代背景を踏まえると、意外なことが分かりそうですね。

光:『枕草子』の作者、清少納言って、一般的には明るくって、社交的なイメージがありますよね。でも『枕草子』が描かれたのって晩年なんですよ。清少納言って、政治的には敗者です。中宮定子に仕えていて、没落していく中関白家に属していたわけですから(※)。そう考えると、『枕草子』って、没落していく側に所属していた人が、没落しきった後で、良かった時の記憶だけを思い出してまとめた作品といえるんですよ。全部終わり、もう何も残っていない状況の中で、美しかった記憶の一部分だけを、「これってすてきだったわ」「これって本当に良かったわ」っていうのを思い出しながら書いていくようなイメージです。そうすると、清少納言は、明るくて社交的な人っていうよりも、少し暗めで、「昔は良かったわ……」って思い出していく、アラフォーくらいの女性を想像しませんか?

※清少納言が仕えていた「定子」は、一条天皇の「中宮」(一夫多妻制において、本妻に近い地位)だった。そのため、彼女がいた「中関白家」は政治勢力の中心にいたが、定子が若くして死んだ後は、急速に衰退していった。

文学作品を読むことは、「旅」に出ることと同じ

――先生は、文学作品を読むことの魅力はどんなところにあると思いますか?

光:文学作品を読むことを、僕は「旅」って表現しているんです。どんな文学作品も、今の僕たちの文脈だけで見ちゃうと、すごくつまらないんですけど、「作品が成立した時代の社会と、現代社会はどう違うか」や「作者がどういう視点で書こうとしていたか」っていうことを考えれば、ちょっとした「旅」になるわけですよね。自分に全く関係ないように見える時代に「旅」に出たりとか、自分と絶対関わりがないような登場人物の思考を追体験することで、作者の持っている世界観を一部共有してみようとする。それが、文学作品を読むおもしろさだと思うんですよ。

自分で作品を読んでいて、「あっ、楽しいなあ」って思える「きっかけ」が大事ですね。例えば、ウィキペディアで作者や時代背景について調べるだけでも、興味の幅がきっと広がると思います。ぜひたくさんの文学作品を楽しんで、みなさんも旅に出かけてみてください。

――ありがとうございました。

国語といえば、文章を読解して、問題に答えることが重要だと思っている人もいるかもしれません。それも大切ではありますが、作品の内容をじっくりと味わうのも楽しいものです。時には過去にタイムスリップしたり、時には外国の文化に触れたり、自分が絶対に体験できないであろうことを、間接的に楽しめるのが文学作品の魅力。国語の成績を伸ばしたい人は、文学作品の作者や時代背景を調べてみてはいかがでしょうか。