気になる社会人にインタビュー! 第42回:刃物職人に聞いてみた10のコト!

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気になる社会人にインタビュー!
第42回:刃物職人に聞いてみた10のコト!

2016.07.12

提供元:マイナビ進学編集部

気になる社会人にインタビュー!
第42回:刃物職人に聞いてみた10のコト!

刃物職人とは、手作業で刃物をつくる職人さんのこと。工場でつくられたものと違って、手でつくられた刃物は、一丁一丁デザインが違います。つくり手の仕事に向かう姿勢や考え方、人柄までもが、製品に反映されるといわれています。

今回は、新潟県三条市にある「日野浦刃物工房」の3代目、日野浦 司さんに、刃物職人の仕事について詳しくお話を伺いました。

この記事をまとめると

  • 刃物をつくる世界は工業化が進んでいるが、日野浦さんは「冶金学」の観点から、伝統技術を受け継いでいくことを決めた
  • 日本の伝統技術は海外でも高く評価されている
  • つくり手の仕事に向かう姿勢、気持ち、考え方は、できあがった刃物に反映される

刃物をつくる技術は、「進化」「革新」を伴いながら伝えられる

「日野浦刃物工房」の3代目、日野浦 司さん

「日野浦刃物工房」の3代目、日野浦 司さん

Q1. 普段のお仕事について教えてください。

「私は刃物づくりを行っている『日野浦刃物工房』の3代目として働いています。工房では、鉈(なた)を中心につくっていますが、ほかにも包丁などをつくることもあります。『こういう刃物を、1本だけつくってほしい』という細かい注文も受けています。鉄を鋼(はがね)に付けるところから始め、熱した素材をたたくことによって、鉄を鍛えて、刃物を形づくっていきます」

Q2. 現在の鍛冶(※)のお仕事を始めたときのお話を聞かせてください。

「私は高校を卒業した後、商社で4年間サラリーマンとして働いていたのですが、刃物職人であった先代の父が、私を跡継ぎにするために呼び戻したんです。鍛冶は手伝い程度のことはしていたものの、本格的に取り組むのは初めて。私が職人になった段階で、刃物づくりの世界は工業化が進み、刃物は工場でつくるのが主体になっていました。『より早く・多く・安く』つくられる時代になったということですね。

我々が刃物をつくるときは、鉄に鋼をつけるところから始めます。それが、日本の伝統技術です。しかし工業化が進むと、もともと鉄に鋼がくっついている材料を購入し、プレス機で抜いて、生産性を高める鍛冶屋も現れました。『うちも工業化の波に乗ろうかな……』と迷ったことはありましたが、『待てよ』と思いとどまり、伝統的なやり方を受け継いで、刃物づくりを行っています」

※鍛冶(かじ)……金属の鍛錬をして、製品を製造する仕事

Q3. 工業化の波に乗らなかった理由は何だったのでしょうか?

「『伝統的な技術って、どんな価値があるんだろう?』と疑問に思ったのです。鉄や鋼を叩いて刃物をつくるのは、昔は機械がなかったから、そうしていただけなのだろうか? それとも、ほかに何か理由があるのだろうか? 自分なりに検証してみようと考えました。まず、金属試験場に行って、顕微鏡で裁断した鉈をのぞいてみました。科学的な観点から『良い刃物とはどういうものなのか?』を知るために、鉈の金属組織について調べようとしたのですが、工業系の知識がないのでよく分かりませんでした。そこで、『冶金学』(※)を勉強することにしたんです。

工学博士の本を買いあさり、東京にある専門学校には、聴講生として何度か授業に参加しました。勉強の結果、伝統技術によってつくられた刃物は、金属を叩いて組織を細かくしている分、欠けにくくて、研ぎやすくて、長く切れるのだと分かりました。そうして私は、父の技術を受け継ぐことを決めたのです。

親方から伝えられたことを、ただ『いいものだから』と確信して、よく考えないまま受け継ぐのは、プロではないと思っています。もちろん、人の持つ勘や経験は大事です。でも、それに加えて、今の科学技術に基づいた部分で『良い刃物をつくるための方法』を確立したかったんです」

※冶金学(やきんがく)……金属工学ともいう。金属の物理的・化学的な性質についての評価を行う学問。

Q4. お仕事に取り組む中で、大切にしていること、心がけている姿勢があれば教えてください。

「鉈は普段の生活で使う『手道具』です。使い手にとって『いいもの』をつくらなければいけません。『よく切れる』『刃こぼれしにくい』『研ぎやすい』といった、使い手の立場にたった刃物づくりを心がけています・また、技術を受け継ぎ、ほかの人に伝えるときは『継承しながら、進化する』ことが大切だと考えています。私がつくっているような鉈は、道具として人が使うものです。この仕事はいわば『産業』なので、技術の革新は重要です」

海外でも評価されている日野浦さんの刃物

「日野浦刃物工房」でつくられた刃物

「日野浦刃物工房」でつくられた刃物

Q5. お仕事の中で、達成感のあったエピソードはなんですか?

「この仕事は評価をいただける場が少ないのですが、岐阜県で行われる『アウトドアナイフショー』に参加して、2回『ベストナイフショー』に選ばれたのはうれしかったですね。毎年、77~78組くらいの企業や個人が出展し、その内3組が『ベストナイフショー』に選ばれるんです。鍛冶は、ただ金属の見た目を整えるのではなく、鉄、鋼を鍛える『鍛造』という技術によって刃物を形づくっていきます。そういった点がご評価いただけたのかな、と考えています」

Q6. 逆に、お仕事の中で教訓にしているできごとはありますか?

「私には、失敗の経験は山ほどあります。でも、例えば『A→B』に行きたいとしてうまくいかないときは、試行錯誤しますから、『A→C→B」『A→D→B』……と、過程で新たなことが学べるんですね。1回で成功するより、3回目で成功したほうが、『キャリアが2つ多くなる』んです。失敗しない人生なんてつまらないですし、失敗しないと分からないことや教訓があると考えています」

Q7. 日本の刃物は、海外からも反応があるのでしょうか?

「私はドイツで行われている見本市『フランクフルト・メッセ・アンビエンテ』にも、2006年より毎年、作品を出展しています。こちらでも評価をいただいて、今ではユーロ圏、ドイツ、イタリア、フランス、スペイン、オランダ、ベルギー、ポーランドなどで、私のつくった刃物が取引されています。私も毎年ヨーロッパには行っていますし、うちの工房に海外からお客様がいらっしゃることもあります」

Q8. 海外に行くことによって、あらためて日本の技術について感じたことはありますか?

「最近、テレビでも、海外で日本の伝統工業が高く評価されていると言われていますよね。私は、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアも見てきましたが、確かに日本の技術は間違いなく世界一です。ただ、伝統的技術は後継者不足という課題点を抱えています。さらに、『マーケティング』の観点がないんですね。『ものづくり』には長けているのですが、『売る』ことがうまくできていない。『自分たちの製品の長所』を伝えきれていないという印象を受けます」

刃物職人の仕事において、一番大事なのは「人」

Q9. 高校時代はどのように過ごしていましたか? 

「高校時代はスポーツが好きで、バスケットボール部に3年間所属していました。部員が多かったので、レギュラーにはなれませんでしたが、辞めなくてよかったと思っています。辞めるのは簡単ですが、それでも辞めないことによって耐える力が身についたと思います。試合には5人しか出られませんが、交代要員や普段の練習のことを考えると、部活にはたくさんのメンバーが必要ですよね。チームの一員として、つらいこと、楽しいことを経験できたのは良い経験でした」

Q10.「日本刀・刃物職人」を目指している、仕事に興味を持っている高校生に向けて、メッセージをお願いします。

「私の下には、20歳の職人がいます。その職人に『この仕事で、一番大事なことは何だ?』と聞いたところ、『“器用さ”“ものづくり”を好きでいることでしょうか」と言いました。それに対して、私は『それも大事だが、一番大事なのは“人”だ」と答えました。

仕事を始める際は、人が道具をセッティングし、人が作業を進めます。作業のやり方が、製品に現れるんです。3人の職人が、全く同じサンプル品を見ながら刃物をつくったとしても、一丁一丁違うものができあがります。一見、否の打ちどころのない刃物でも、どこか『冷たさ』を感じるときもあります。それは、つくった人の人柄が反映されているのでしょう。つくり手の仕事に向かう姿勢、気持ち、ポリシー(考え方)が、できあがった刃物を通して伝わることは、知っておいていただきたいですね。この仕事は大変なこともありますが、若い方は、一人でも二人でも、希望を持って我々の業界に入ってきてくれたらうれしいな、と思っています」

日野浦さんのお話からは、「今の使い手の立場に立った刃物づくりを目指す」という信念が伝わってきました。そして、そのような考え方は製品にも反映されるといいます。「刃物職人を目指したい」と考えている高校生の人は、まずは自分なりの信念を持つことを大切にしてみてはいかがでしょうか。

【取材協力】日野浦刃物工房
http://www.ginzado.ne.jp/~avec/hinoura/index.html

この記事のテーマ
デザイン・芸術・写真」を解説

デザインは、本や雑誌、広告など印刷物のデザイン、雑貨、玩具、パッケージなどの商品デザイン、伝統工芸や日用品などの装飾デザインといった分野があり、学校では専門知識や道具、機器を使いこなす技術を学びます。アートや写真を仕事にする場合、学校で基礎的な知識や技術を身につけ、学外での実践を通して経験やセンスを磨きます。

「デザイン・芸術・写真」について詳しく見る

この記事で取り上げた
「日本刀・刃物職人」
はこんな仕事です

日本固有の鉄工芸品である日本刀の製造は、文化庁の許可が必要とされる。鋼(はがね)を原料とし、職人が何度も折り返し鍛錬することで、深い趣や美しさが生まれる。刀鍛冶とは別に日常の道具として使うハサミやナイフ、包丁、のこぎりなどをつくるのが刃物職人。どちらも作業の基本的な流れは、窯に金属を入れて焼き入れし、金槌でたたいて成形、水に入れて焼き戻すという工程を繰り返す。日本刀の刀鍛冶は、名工に弟子入りして修業を積むのが一般的。刃物職人は大阪府堺市や岐阜県関市など代表的な生産地で働く人が多い。

「日本刀・刃物職人」について詳しく見る