UIデザイナー割石さんに聞く 「好きなことを仕事にする」ということ
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面白法人カヤックのデザイナーを務め、現在は「FRIL」でも有名なFablicのデザイナーを務めるUI(※1)デザイナー・割石裕太さん。“「わ!」より「お!」となる体験を。”をコンセプトに、まるで生きているかのような優しいデザインを生み出す割石さんに、現在に至るまでの経緯をお伺いしました!
※1
ユーザーインターフェイス(User Interface)の略。
ユーザーと製品・サービスの接触面を指す。
この記事をまとめると
- 割石さんは、「よりよい制作」を行うためにイベントの登壇などでアウトプットは欠かさない
- イラストで挫折したのは「自分の中でのゴールが見えなかった」から
- 割石さんの考える「UIデザイン」は「ものを最適化する」ということ
考えるまとめるために、アウトプットは欠かさない
ーーさっそくですが、現在のお仕事内容をお聞かせください。
割石:3月半ばにリリースされた「RIDE」というバイクフリマアプリのアートディレクション・UIデザインをおこなっています。ファッションを取り扱った「FRIL」とはまったく違ったアプリですね。
自分は免許も持っておらず、ユーザー層ではないのですが、だからこそ実際にユーザーに会いに行き、声を聞きながら、他のプロダクトにはない、バイクならではの表現や、UI・体験の設計などができていると感じています。
ーー多くのトークイベントなどにも登壇されていますが、そういった活動も積極的に行っているのですか?
割石:そうですね。お声がけいただいたイベントには可能な限り出演しています。SNSなどにもプレゼン資料を公開しているので、学生のみなさんに勉強がてら見てもらえると嬉しいですね。
それと、社内でいろいろと考えることも大切ですけど、それを人に伝えるときに改めて考えると見えていなかったことが見えたりするんです。
ーー情報をまとめる作業はアウトプットのためには必須ですね。
次に、デザインを仕事にしようと思ったきっかけをお聞かせください。
割石:高校を卒業するまで、絵で仕事していきたいと考えていました。
当時はずっとイラストを描いていたんですよね。高校2年生のときから、賞を獲ることも増えてきました。
その理由は簡単で、音楽がすごく好きだったので、CDジャケットなどのイラストデザインに携わりたかったんですよね。
ーー「アート(に近いイラスト)」と「デザイン」だと、極端ですね。
割石:そうですね。初めは自分の描きたいものを描いて評価される、それだけで楽しかったのですが、最終的に「どうなりたいのか、どんなものを描きたいのか」というゴールが自分の中にないことにモヤモヤしてきたんです。そのとき初めて、「絵がかけてデザインもできたら、元々やりたかったものに近付ける」と思って、大学の進路をデザイン学科に決めました。
有名デザイナーの原点はイラストレーションにあった
ーー高校のときから将来の夢が明確だったんですね。
原点はイラストだったんですか?
割石:はい、そうです。大学はデザイン学科を選びましたが、高校時代は美術部に所属していて、ライフスタイルも絵に偏っていたと思います。
改めて今見ると、「よく頑張ってるな」と感じるんですよね。それで、イラストに対しての自分の中での一区切りはついていたのかな、と。当時、イラスト活動がもっとうまくいけば美術系の大学進学も考えていたんですけどね。
ーーなにかあったのですか?
割石:僕、デッサンがすごく苦手だったんです。自分の絵を描くことができても、形態模写みたいなことにストレスを抱え込んでしまい、体調崩しちゃったんです。それが引き金となり、入試もうまくいかなくて。
自分の中に明確なゴールが見えなかったのもあり、結果、この事が最後の一押しとなり、デザインの道に進もうと決めたのですが。
UIデザインをもっと広義の意味に
ーーそんな割石さんは「UIデザイン」とはどういった意味だとお考えでしょうか。
割石: いわゆる”デザイン”という言葉のイメージからすると「デザイン=ものをつくる」と思うのですが、特にUIデザインは「ものをつくる」ということだけではなくて、「ものを最適化する」という部分が大きいのかな、と。
ーー具体的にはどういった考え方なのでしょうか?
割石:例えば、どれだけ派手な装飾や表現をしたとしても、ユーザーに魅力が伝わらなかったり、使い方がわからなければ、もう使ってもらえないと思うんです。
そのためには体験のコアとなる部分を理解してブレないようにする必要があって、表面上の見た目はその時々・対象に合わせて最適化すればいいと思っています。魅力的な体験ができて、見た目もかっこいい! かわいい! ってなると最高ですよね。
いわゆるビジュアルデザインの要素と、コアの部分をちゃんと理解して何が大事で何がいらないのかの情報設計の2つの面が重なっている非常に面白い領域だと思います。
例え「UIは必要ではない」という切り口の本があるとしても、その人のいう「UIデザイン」は、すごく視野の狭い言葉なのかなって思います。
いわば画面上の話で“パソコン”↔︎“ユーザー”に限定した話で完結させているはずなんですよね。実際、パソコンとユーザーの間を取り持つものはなんでもよくて、その設計箇所についてはもっと広く考えられるんじゃないかなと思っています。
今言っていたようなUIデザインの考え方って、実際は画面外のもののデザインなど、もっといろんなものに応用できると思うんですよね。
ーーご自身の展望としても、もっと広義の意味で「UIデザイン」を広めたいのですね。
割石:そうですね。結局、最適なデザインを行えているかどうかだと思います。いわゆる「UIデザイン」っていうのは「画面の中のこと」なのかもしれませんが、僕はそこを起点にして、もっと視野を広げていきたいと思っていますね。あまり言葉に固執して、自分たちを枠の中に収めないようにしたいなと。
高校生の頃、イラストへの苦悩や挫折を味わったことで、“デザイン”という新たな道を切り開いた割石さん。ちょっとした視野の広げ方でどんな自分にもなれる将来性を感じる事ができました。
後編では、デザイナーとしての割石さんの「思い」に迫ります。
【プロフィール】
割石 裕太 (wariemon)
OH / Fablic, inc. : Art Director, UI Designer.
1989年 香川県高松市 生まれ。デザイン系を学べる大学を卒業。
2012年 に 面白法人カヤック に新卒で入社、クライアントワークを経て、“Lobi” “Filters” のアートディレクション・UIデザインを担当。
2015年9月より 株式会社Fablic に入社し、バイクフリマアプリ "RIDE" のアートディレクション・UIデザインを担当。
心地よい温度感を意識したデザインを心がけており、UIに関する登壇や、記事掲載も行っています。
“「わ!」より「お!」となる体験を。” をコンセプトに、 OH という屋号で ロゴ・ブランディング・UIデザインを中心に幅広く活動中。
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この記事のテーマ
「コンピュータ・Web・ゲーム」を解説
デジタル情報をつなぐシステム構築をはじめ、Webやゲーム、アニメーション、映画など、メディアやコンテンツを創り出す仕事です。コンピュータの設計・開発などを学ぶ情報処理系、アニメ・ゲームなどの制作を学ぶコンテンツ系の学問があります。ビジネスの現場で使われるアプリケーションスキルを身につける授業も役立ちます。
この記事で取り上げた
「Webデザイナー」
はこんな仕事です
Webサイトをデザインする仕事。Webディレクターの指示に基づき、顧客の要望に沿ったWebサイトに仕上げていく。Photoshop®やIllustrator®などを使い、写真やイラスト、文字をレイアウトし、企業や商品の魅力を的確に伝える。見た目の美しさだけでなく使いやすさを兼ねたデザインが求められる。Webサイトの企画や設計を任されることもあるので、センスだけでなく発想力が必要な場合もあるだろう。経験を積んだ後、Webディレクターへとキャリアを重ねていくケースがあり、フリーランスで活躍する人も多い。
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