気になる社会人にインタビュー!
第29回:鍼灸師に聞いてみた10のコト!
メイン
テーマ

何だか疲れがとれない、身体の関節が痛いといった症状があるときに、病院に行くという方法がありますが、ほかにも鍼(はり)やお灸を使って治療するという方法もあります。体を整え、自身が持っている自然治癒力を高めてくれるという鍼灸師(しんきゅうし)という仕事は、普段どのようにしているのでしょうか? 個人で鍼灸院を営む伊藤真太郎さんにお話を伺いました!
この記事をまとめると
- 鍼(はり)やお灸を使って、体の不調を整えていく
- 患者の痛みは日によって違うので、敏感にキャッチし対応する
- 資格取得とともに、技術の修練や経験も必要
鍼や灸で不調を持つ人の自然治癒力を引き出し、健康へと導く
Q1. 普段のお仕事について教えてください。
「私は鍼灸師です。『しんどい、つらい、痛い』など、体に不調がある人を鍼(はり)とお灸を使って治療する仕事です。鍼と灸によって、その人が本来持っている自然治癒力を高め、自分で自分の身体を治していけるようお手伝いするのが鍼灸師の役割だと思います」
Q2. 1日のお仕事の大まかな流れを教えてください。
05:00 起床・猫に餌やり
06:00 マラソン(30分)
07:00 朝食と子供の保育園準備
08:00 施術所掃除
09:00 治療開始
12:00 昼食
13:00 治療開始
17:30 保育園お迎え
20:00 業務終了
21:00 就寝
Q3. 現在のお仕事に就くまで、どのような勉強を積まれてきたのでしょうか。
「専門学校で3年間勉強し、国家試験を受けて鍼灸師の資格を取得しました。その後、専門学校が開いている治療所で実際の患者さまを治療しながら研修を受け、独立開業しました」
Q4. お仕事の中で、魅力ややりがいを感じるのはどんなときですか?
「体の不調を訴えて来院された患者さまが、『楽になった!』と笑顔で帰ってくれるときです。実際に自分が行った治療で効果を実感してくれ、苦痛が喜びに変わる瞬間に立ち会え、手ごたえを感じることができるのは、鍼灸師の醍醐味だと思います」
新鮮な気持ちで患者と向き合い、コミュニケーションを取っていく
Q5. お仕事に取り組む中で、大切にしていることがあれば教えてください。
「毎回、新しい気持ちで患者さまと向き合い、治療を行うように心がけています。いつもと同じように症状を訴えていても、その痛みがいつも同じということはなく、状況によって感じ方も違い、感情など、生活における気分の変化によっても体のつらさは変わってくるからです」
「また、普段から何気ない会話を何気なくするのではなく、大切な話として聞くようにしています。お客さまが気負いなく話している会話の中に、大切なキーワードが隠されていることがあるからです。『どうして今この話をしているのかな?』と考えながら話を聞くようにしています」
Q6. お仕事の中で、一番の思い出や達成感のあったエピソードはなんですか?
「90代の高齢の患者さまが、『極楽だ~』と言ってくれることです。年配の方にとって、今日の喜びを感じていただくことができるのは、すごくうれしいことです」
「逆に、今後の教訓としている出来事もあります。香りが良くなるようにと思い、施術に使うタオルに柔軟剤を使っていましたが、化学物質過敏症を患っている患者さまから、『柔軟剤を使っているタオルは化学物質過敏症の症状を悪化させ、息苦しくなる』とご指摘いただいたことです。いろいろ調べていると、身体にとってよくないものであることが分かりました。特に子どもにはよくないと知り、すぐに使用をやめました。ここは体の調子を良くするところなのに、逆効果になっては意味がありません。いまは身体に優しいナチュラルなものだけを使うようにしています」
患者から課題を見つけ、それを少しずつクリアしていく
Q7. どのようにして、鍼灸の技術を磨いていますか?
「患者さまから課題をいただくようにしています。限られた施術時間の中で、どれだけ患者さまの不調や不安などを取り除くことができるのか。そこが治療に求められている部分だと思います」
「しかし、すべての患者さまが100%満足してくれることはないと思っています。なので、その患者さまが満たすことができなかったこと(○○の痛みを取り除く、質問されたことに答えられる知識を持つ、など)を課題にして、次の患者さまからは応えられるように調べたり、勉強したりしています。『一人の患者さまから一つの課題』と決めることで一歩ずつ進んでいけるので、地道に積み重ねていくことが技術向上につながると思っています」
Q8. お休みの日はどのように過ごしていますか?
「趣味は、DIYです。今は、駐車場の屋根をつくっています。外構工事は業者に頼むととんでもなく高い金額になることもあり、自分でできることはやっています。金銭的な負担を減らすことから自分でやり始めたのですが、実際にやってみると、お店の『顔』でもある外観を自分の理想に近づけていくことができ、たいへんですが楽しいです。患者さまとの会話でも話題になることがあり、コミュニケーションのきっかけにもなっています」
Q9. 高校時代はどのように過ごしていましたか?
「高校時代はアルバイトばかりしていました。もっと勉強していればよかったと、つくづく思います。特に勉強しておきたかったことは『生物学』かなと思います」
Q10. 鍼灸師を目指している高校生へ向けて、一言メッセージをお願いします。
「正直、なかなかたいへんなこともあります。しかし、理想をしっかり描き、行政の仕組みをうまく活用したり、患者さまとの信頼関係を築いていけば、仕事を続けていくことは可能です。どうしても人の身体に関わる仕事がしたい、という人は、ぜひ将来の選択肢の一つに入れてください。患者さま一人ひとりと密な関係を築いていくことができるので、達成感を得ながら仕事ができると思います」
鍼灸師は、とても密接に人と関わりながら患者さんをケアしていくので、人やその地域とつながりながら身体を整えることができる素晴らしいお仕事ですね。資格取得から修行、そして独立開業などいろいろなステップがあるので、長い道のりにはなりそうですが、定年もなく生涯現役で続けられるなどメリットもたくさんあります。身体のことについて興味があるなら、志してみるのもいいかもしれません!
【取材協力】いとう鍼灸院
この記事のテーマ
「医療・歯科・看護・リハビリ」を解説
医師とともにチーム医療の一員として、高度な知識と技術をもって患者に医療技術を施すスペシャリストを育成します。医療の高度化に伴い、呼吸器、透析装置、放射線治療などの医療・検査機器の技師が現場で不可欠になってきました。専門的な技術や資格を要する職業のため、授業では基礎知識から医療現場での実践能力にいたるまで、段階的に学びます。
この記事で取り上げた
「鍼灸師(しんきゅうし)」
はこんな仕事です
鍼灸師は、鍼(はり)や灸(きゅう)を用いて人体のツボに刺激を与え、病気を治療する仕事。この治療方法は東洋医学に基づいており、金属の鍼と「もぐさ」と呼ばれる植物を燃やす灸を使って行われる。肩こりや腰痛、冷え症、アレルギーやストレスによる病気で悩む患者に対し、薬以外の方法でそれらの症状を和らげる効果がある。近年は、エステサロンなどでリラクゼーションの一環として取り入れられることも増えており、多くの女性が活躍中。鍼灸院で経験を積み、独立を目指す人も多い。
-
PICK UP! 「鍼灸師(しんきゅうし)」について学べる学校
-
医療・歯科・看護・リハビリについて学べる学校

