気になる社会人にインタビュー!
第27回:インタープリターに聞いてみた10のコト!

皆さんは「インタープリター」という職業をご存じですか?「通訳者」という意味を持ち、「自然や歴史などの目に見えないメッセージ」を教えてくれる、自然に大きく関わる職業です。「通訳」と「自然」というと、一見関係のないように思えますが、一体どのようなお仕事なのでしょうか?
そこで今回は、女性インタープリターとして活躍する小川結希さんにお話を伺いしました!
この記事をまとめると
- インタープリターとは「通訳者」という意味で、自然や歴史を分かりやすく通訳する仕事
- インタープリターは、森林体験やエコツアーなどで活躍している
- 人とコミュニケーションをとりながら、自然の感動を伝える
目に見えない自然について、分かりやすく伝える仕事
Q1. 普段のお仕事について教えてください。
「インタープリターとは、直訳すると『通訳者』です。通訳者というと一般的には外国の言葉を訳して伝えてくれる人のことですが、私たちの場合は、言葉の通訳ではなく、『自然や歴史などの目に見えないメッセージ』を人が分かるように通訳しています。私は自然にまつわるインタープリターをしています。例えば、森の中を歩いていて、そこの森がどのような意味を持っている場所で、どのような生きものの活動があるかは、目には見えませんよね。それを、目に見える植物や生きものなどの解説、森との触れ合いや林業体験などを通して、人々に分かりやすく伝えています」
「世の中には性別や年齢、出身地や職業などが違う人がたくさんいるので、興味や理解力もさまざまです。そのため、自然や歴史などについて伝える方法も、相手に合わせたやり方(解説、実体験、遊び、ゲーム形式、映像、印刷物、紙芝居など)が必要になります。そして、相手がリラックスして楽しめるような空気づくりや話し方も必要になります。そのため、インタープリターは、『環境教育におけるコミュニケーションの専門家』ということができます」
Q2. 現在のお仕事に就くために、どのような勉強をしてきたのでしょうか?
「私は大学で森林科学のコースに所属し、そこで環境問題や森林について学んでいました。また、小学校の総合学習で樹木と触れ合う活動をしたり、キャンプの学生スタッフなどもしていたので、それは現在に生きる経験だったと思います」
自然の中で四季の移ろいを感じ、人と感動を共有する
Q3. お仕事の中で、魅力ややりがいを感じるのはどんなときですか?
「1つめは、お客さんと自然の魅力を『共感』できたときです。それは、『風が気持ちいい』とか、『虫が頑張って生きている』とか、小さいことだったりしますが、自分が大切にしたいことがお客さんに伝わって一緒に感動できたとき、すごくうれしいです」
「2つめは、お客さんの興味や考え方を変えることができたときです。自分の言葉や提供する体験で、その人が喜ぶことができたり、その人の人生を変えるようなことができたりするときがあります。それはインタープリター冥利につきるのです」
「3つめは、自然そのものが私のカレンダーになったことです。外で見られる鳥の種類や鳴き方、咲いている植物や空気の匂いなどから、『今は5月の中旬だな』とか、『11月のはじまりになった』というふうに、四季を考えられるようになりました。これは、地球に生きる動物としてすごくうれしい感覚です」
Q4. お仕事に取り組む中で、大切にしていることがあれば教えてください。
「一番大切にしているのは、相手のことを考えて行動することです。相手の話をしっかり聞き、相手の思いや考えを受け止め、相手が欲していることを考えます。そしてその中で、自分の思いを伝えていくことです。これは、お客さんや仕事のクライアントだけでなく、仲間や友達、家族に対してもそうです。普段から意識しておくことが、その資質は高めるのに大切です。と言っても、なかなか難しいことで、私もまだまだ勉強中です」
Q5. お仕事の中で、一番の思い出や達成感のあったエピソードは何ですか?
「私が担当する施設に遊びによく来ていた家族のお母さんに、『息子が自然を好きになって、優しい気持ちになれたのはあなたと出会ったおかげ』と言っていただいたことや、子どもから直接『ゆうきさんのようなインタープリターになりたい』と言っていただけたことです」
Q6. 逆に、今後につながる教訓となった出来事があれば教えてください。
「ガイドウォークでコースを間違えたり、物品の用意を間違えたり……。失敗はたくさんあります。その中でも、お客さんの気持ちに添えられなかったことが一番心に残っています。インタープリターになったばかりのころ、15人ほどを夜の森を案内するナイトプログラムで、ある家族の小さい子が怖がって大泣きしてしまいました。それは、申し込む前の親御さんへの確認や歩いているときのフォローが足りなかったことが原因です。それ以降は、一人ひとりのお客さんへの気遣いをより意識するようになりました」
Q7. インタープリターに向いている人や、インタープリターになる際に必要な知識について教えてください。
「私は、インタープリターにはいろいろなタイプがいたほうが面白いと思うので、明るく元気に話す人や、渋くかっこよく話す人、博士のような雰囲気の人、文系や理系や運動系など、さまざまな方がそれぞれの魅力を発揮できると思います。重要なのは、『いろいろな人に伝えるための技術』があるかどうかです。しかし、資格があるわけではないので、その技術も現場から学ぶことが一番です」
Q8. インタープリターという仕事は今後どのように発展していくと思いますか?
「アメリカの国立公園ではじまったインタープリターですが、現在は自然公園だけではなく、博物館や美術館、科学館や歴史資料館、動物園や水族館、エコツアー、世界遺産地でのガイド、学校教育など幅広くなっています。まだまだ日本人の中で『インタープリター』という職業はメジャーではありませんが、これから当たり前の職業になるといいな、と思っています。そして一番の願いは、お父さんお母さんがインタープリターの要素を持ち、家庭の中が自然や歴史への学びの場となることです」
人に感動を伝えるうちに、自分の心もどんどん豊かになっていく
Q9. 高校時代はどのように過ごしていましたか?
「高校生活で思い出すのは、大好きだったバレーボール部の活動、そして勉強も楽しくて大好きでした。それは学年のみんなともとても仲がよく、それが部活や勉強を頑張る原動力になっていました。もちろん、負けじと恋愛も楽しんでいましたよ」
Q10. インタープリターを目指している高校生へ向けて、一言メッセージをお願いします。
「インタープリターは、人にさまざまな体験や知識を提供するのに合わせて、自分の心がどんどん豊かになるお仕事です。おばあちゃんやおじいちゃんになっても続けていたいと思っている、自慢の仕事ですよ!」
自分で学んだ知識を人に伝え、そして人と一緒に何かを共感できるというインタープリターという職業。自然だけでなく、歴史や博物館などの施設など、これからどんどん広がっていきそうな分野であることも魅力的です。感動する現場に立ち会える、とても貴重なお仕事なので、自然や人と触れ合うことが好きという人は、ぜひインタープリターの仕事や活動場所について調べてみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
(株)自然教育研究センター 小川結希さん
この記事のテーマ
「環境・自然・バイオ」を解説
エネルギーや環境問題の解決など、自然や環境の調査・研究を通じて、人の未来や暮らしをサポートする仕事です。また自然ガイドなど、海や山の素晴らしさを多くの人に伝える仕事もあります。高い専門性を必要とする仕事なので、職業に応じて専門知識や技術を学び、資格取得や検定合格をめざす必要があります。
この記事で取り上げた
「インタープリター」
はこんな仕事です
自然公園などで、ガイドツアーで森林の解説をしたり、体験型プログラムを提供したりする仕事。活躍の場は、自然公園、学校の体験学習、都市の緑化イベント、エコツアーなど。言葉による説明だけでなく、歩く・触れるといった参加形式で直接体験の場を提供することに重点が置かれており、自然のよさや大切さを参加者に感じさせることが重要な目的となる。必須資格はないが、環境教育者としての側面も併せ持つなど、高度な知識や経験を求められるため、関連団体のトレーニングや講習会に参加しておくとよいだろう。
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