りんご飴マンが行く! 津軽のお仕事取材レポート 〜マスコミ編〜
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やぁ、今を生きる高校生のみんな、りんご飴マンだよ。
ところでみんな、朝は新聞を見てるかい? 僕の学生時代はテレビ欄とスポーツ欄しか見ていなかったけど、今では時間がある日は色々な面を見ることにしているよ。毎朝何気なく読んでいるこの新聞だけど、どんな人が書いてどのようにして僕らのポストに届くのだろう。
この記事をまとめると
- 地域に根付いた地方新聞社に勤める若手社員の仕事を取材
- 人の死と直結する現場に戸惑いながらも、人とつながり、伝えることの価値を知る
- 加速するデジタル社会の中で、新聞は物事を多面的に見るためのメディア
ということで、今日は津軽に住んでいるなら知っている人も多い、地元に長年愛される老舗の新聞社・陸奥新報さんの若手社員をりんご飴マンが突撃取材! 報道機関としての仕事内容ややりがいなどを聞いてきたよ。
現場に足を運ぶ毎日。地域に根付いた新聞ならではのニュースも
お話を聞かせてくれたのは福田 藍至(ふくだ らんじ)さん(30歳)。入社7年目の若手中堅社員さんだ。
――福田さん、今日はよろしくお願いします。
福田:よろしくお願いします。
――まず、福田さんの仕事内容について教えていただけますか。
福田:現在は報道部というところで記者として活動しているので、おおざっぱに言えば現場に取材に行き、その後自分で記事を書くという仕事をしています。書く内容はエリアやジャンルによって切り分けられており、今は弘前市内の商工・金融・労働関連と大鰐町エリアを担当しています。
――なるほど。新聞記者さんって聞くと忙しそうなイメージがありますが、1日の大体のスケジュールを聞いてもよろしいですか。
福田:取材ありきなので朝早い日もあれば遅めの時もありますが、大体9時頃からスタートし、日中は取材で外にいる時間が多いです。その後帰社し、夕方から記事を書く、というイメージでしょうか。
――正直、夜は遅いんですか?
福田:個人的に最近は何もなければ20時くらいには帰ろうと努めていますが、日によってはそれ以上会社にいる日もあります。徹夜はさすがにないですね。
――新聞ができるまでの工程をよく理解していないのですが、記者さんが書いた記事はどのような流れで紙面になるのでしょう。
福田:掲載される面によって変わりますが、基本その日書いたものが翌日に掲載されます。事件や災害など速報性が求められるものについては、弊社では25時くらいまで待ち、記事の入稿(印刷するための記事原稿を印刷所に渡すこと)を受け付けて、その後印刷所で新聞として発行し、販売店から皆さんのお手元にお届けします。
――陸奥新報は地域に根付いた新聞かと思いますが、特徴を簡単に教えていただいてよろしいでしょうか。
福田:やっぱり津軽エリア中心なので、農業・観光はうちの花形担当ですし、
実際取り上げるニュースは多いですね。地域の人に見てもらいたいという意識が強く、トップ面も地元のネタであることが多いです。
――地元ネタが多いと面白い取材もありそうですが……?
福田:たしか八つ葉のクローバーを見つけた、というのを取材しに行ったことがあります(笑)。重い取材ばかりでなく、こういった取材がたまにあると癒されます。
つらかった“サツタン”時代を乗り越えて感じたのは、人とのつながり
――福田さんは入社当時から記者をやっていたのですか?
福田:いえ、1年目は新聞を作る制作部でした。2年目から記者として仕事をしております。最初は事件・事故・災害などを取材する警察担当、いわゆる“サツタン”をやっておりました。
――“サツタン”! 何かカッコいい響きですねぇ。
福田:いえいえ、それが全然そんなことはなく……。今でも鮮明に覚えているのですが、配属からたしか2日目で、死亡事故を取材したことがあって。
――えっ。
現場に行くと車がひしゃげていて、周りには血が飛び散っていた。人が亡くなった現場に行ったのはその時がはじめてだったので、「ああ、これからこれが続くのか」と思うとやりきれない気持ちでいっぱいでしたね。
――そんなことがあったのですね……。それでも、福田さんは今も記者として仕事を続けていますよね。それはなぜなのでしょう。
福田:うーん、やはり人とつながっていくのは面白い、と感じたからではないでしょうか。取材を重ねていくと自分のことを覚えてもらえて、それまでうわべのことしか聞けなかったけど、だんだんと深い話ができるようになる。例えばスポーツの取材では、中高生が大会にかける意気込み、背負っているものがわかってきて、いざ試合でそういった気持ちから成果が出た、それが新聞という媒体に出て注目される、これは素敵なんじゃないか、と思うのです。
――信頼関係がお互いに構築されていって、それが成果という形で世の中に出て行くのは確かに素晴らしいことですよね。
福田:もちろん“サツタン”のように伝えなければいけないものもありますが、自分の書いたものが喜んでもらえる、それだけでこの仕事をやる価値になると思っていますね。
ネットが全てではない、情報を多面的に見る能力を。
――ところで今ちょっと思ったのですが、僕がイメージしている記者の人ってみんな耳の裏に鉛筆挟んで仕事しているのですが福田さんはしていませんね。なぜですか?
福田:いや、それって何年前の話ですか(笑)。聞き込み取材のときもメモはもちろん取りますが、さすがにそんなベタな人はいなくなってきていますね。
――ちなみに学生の頃、福田さんは何になりたかったのですか?
福田:高校の時は文筆家になりたかったですね。小説を読むのが好きで、自分でちょっと書いてたりもしました。大学の時は写真に出会い、フォトグラファーになりたいと思って就活をしていましたがスタジオカメラマンや広告関係は全て落ちてしまった。このままじゃどこにも仕事に就けない、と焦っていた時に知り合いから今の仕事を紹介され、受けてみたら受かった、というオチです。
――意外なキッカケで報道の世界に入ったのですね。あれ? でも取材では文章も書くし写真も撮るじゃないですか。やりたいこと、どちらも叶ってないですか?
福田:そうですね、何だかんだ言いながらやりたいことをやれているのかな。
――そんな福田さんから、最後に今の高校生にアドバイスというか、今の仕事に出会って感じたことを伝えていただけますか。
福田:年寄りじみたことを言えば、“ネットで全てを判断しちゃだめ”ということですかね。新聞に書いてあることが全てではないが、物事を多面的に見るということが大事。その1つとして新聞が役に立つ時もあると思うのです。
――なるほど。情報の一部が切り取られたまま報じられて物事の本質が伝わらないことってありますよね。
福田:手間をかけたほうがいいものって絶対あると思っていて、それは情報収集についても言えます。現に新聞じゃないと書いていないこともいっぱいありますから。また、情報が重なっていてもテレビやネットで報じているものがより深く書かれていたりする。新聞を読みなさいとは言わないが、情報を多面的に見て、自分の中で取捨選択(必要なものを選び取り、不要なものを捨てること)する。これに尽きると思います。
――ありがとうございました。
スマホがあれば誰でも情報が早く、便利に、無料で手に入る時代の中で、今日もローカルニュース全開で地元に愛される新聞を届けるため、持ち帰ったほかほかのネタをもとに記事を打ち込む福田さん。高校生のみんな、誰かに喜びや驚きを与える、伝える仕事がしたい、伝えることを仕事にしたいといった人がいれば、ぜひこういった報道の世界も選択肢の中に入れてほしいなぁ。
ライター:りんご飴マン(りんごあめまん)
1986年、東京都小金井市に生まれる。
縁もゆかりもない青森に恋をして、2015年4月より弘前に引っ越し。真面目にふざけることをモットーに、弘前市非公認の生キャラとしてイベント出演、講演登壇、企画構成・演出、記事や脚本執筆などを行っている。好物はスルメイカ。
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「新聞記者」
はこんな仕事です
新聞の記事を書くのが新聞記者の仕事。新聞社の社員になるか、外部スタッフとして仕事をするフリーランスでの働き方もある。一般的には世界情勢、政治、経済、文化、福祉、健康などの担当部署に分かれ、それぞれに取材や記事作成を受け持つ。全国紙は社会性のある情報を掲載する媒体のため、官公庁や政財界の機関へ取材をすることも多い。また、地方新聞、業界紙や専門紙と呼ばれる特定の業界のニュースを扱う新聞もある。語学や現地の事情に精通していれば、特派員として海外で働くケースも。
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