『ヒロイン失格』『センセイ君主』大人気少女漫画家・幸田もも子先生に聞くお仕事内容とそのやりがい
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『ヒロイン失格』『センセイ君主』の作者として知られる少女漫画家・幸田もも子先生。後編では、お仕事のスタイルや、やりがい、キャラクターを生み出す際に意識していることについてお伺ってきました。
この記事をまとめると
- 幸田先生は、締め切り前はほぼ1日中漫画を描いている
- 漫画家としてやりがいを感じるのは、一人のキャラクターの性格や人生を描き上げられたとき
- キャラクターを描くために嫌いな人にも「共感」と「理解」の作業をするようにしている
1人の性格や人生を描き上げられることは漫画家としてのやりがいです
――今はどのような生活サイクルを送られていますか?
幸田先生(以下、敬称略):日によって違うんですけど、締め切りが近いと1日中原稿を描いて、夜4時間半寝て、それ以外はずっと漫画描いてます。話づくりに入る3日間くらいは、机に向かうと全然浮かんでこないので、動画サイトでドラマを見たり、ぼーっとしたりして、イメージが固まってきたら家だと集中できないので、駅近くのカフェで13時から20時くらいまでがんばって、ちょっとお酒を飲んで帰ったりとか(笑)。
担当編集者さん(以下、敬称略):だいたいネームが上がってくるのが朝の5時くらいですよね。
幸田:そうですね。朝5時に出したら倒れるように寝て、起きてから原稿に取りかかります。するっと行くときは22時くらいにはできて。家に1日中いても1Pも浮かばないときもありますし、うまくいかないときは、人にばーっと話したほうがまとまるときもありますね。
――ネタはどうやって考えていますか? 何かアイデアソースはあるのでしょうか?
幸田:ピンと浮かぶときもあれば、ずっと浮かばないときもあったりと、その都度違いますね。母親に無茶振りで「考えてよ!」と言ったら、めっちゃ面白いのが返ってきたりして、ストーリーの中にアイデアを取り入れたことも何度かありますよ。毎回それを信じちゃうと危険なので、運が良いときの神頼みのような感じで(笑)。
――Twitterからネタを得たりすることもありますか?
幸田:そうですね。高校生のリアルが見られたりするので、結構私、覗き魔タイプかもしれないです(笑)。読者の方とも直接関われる大切な場所でもあります。
――先生は、リプライ返しもこまめにやっていらっしゃいますもんね。漫画家として、一番やりがいに感じていることは何なのでしょうか?
幸田:キャラクターの人間性がうまく描けたときはうれしいですね。一人の性格や人生をちゃんと描き上げられることはやりがいにつながっていると思います。自分は1人なんだけど、違う人間を描けることの喜びはありますね。さらにそのキャラを好きです! と言ってもらえることもすごくうれしいです。
キャラクターを描くために、どんな人にも「共感」と「理解」をできるよう心掛けてます
――キャラクターには、自分の要素を取り入れたりしているんですか?
幸田:今連載している『センセイ君主』の主人公は、自分の先輩に対する謙虚で、しっぽを振ってるときの自分をかわいく誇張して描いています。前作『ヒロイン失格』の主人公は、結構ありのままの自分に近いんですけど、そのなかで賢い部分をカッコよく誇張させたり。自分の中の嫌な部分やズルい要素でも、誇張して描けば自分から出てくるキャラになるという感じですかね。
あと、身近な友達もまるっとモデルにしていますね。『ヒロイン失格』の主人公の親友は、私の小学校から同級生で設定もすべて同じなんです。描いていくうちに自分に似てきてしまうので、最初のイメージとかはその子から得ていました。
――今連載されている『センセイ君主』も、担当さんと幸田先生の関係がモデルになっているんですよね?
幸田:そうなんですよ。前の担当さんに対する、何でも言うことを聞く自分と、ちょっとSな担当さんを生徒と先生の設定にして描いています。今の担当さんに対しては、どちらかというと私が先生のほうですけど(笑)。
――キャラクターって自分を投影しがちなものなんですか?
幸田:人間観察だけで自分を俯瞰できる人もいるけど、私は結構自分投影型かもしれないですね。
担当編集者:人によって深さがありますよね。幸田さんのように、自分の性格の近くまで持ってこないとキャラクターを描けないという人もいれば、浅瀬で他の人を見て、きっとこの人ってこういう感じと判断できて自分のキャラクターにできちゃう人もいたり。
幸田:私の場合は、それが友達じゃないとできないですね。まるっとその人を知り尽くしているからこそできることです。でも、まるごとそのままではなく、例えば女の子を男の子の性別に変えた設定にして登場させたこともあります。
――今お話にも出ていた人間観察は、キャラクターを描く上で大切なことだと思うのですが、やはり高校のころからそういう目を鍛えていたんですか?
幸田:観察はしていましたが、主観がすごく入っていたので当時はしっかりできていたとは思えないですね。主観をある程度消して、人をちゃんと知ろうとすることができるようになったのはここ4~5年の話です。
漫画家としては、その主観のフィルターが個性になるので残しておくんですけど、自分とは正反対の人に共感しなくちゃキャラクターを描けないときもあるじゃないですか。だから正反対の人に対しても扉を開く作業をするようになったのは、近年の話ですね。
昔は、嫌いな人なんて描かなきゃいいと思っていたんですけど、嫌いなキャラクターとかを描かなきゃいけない場合には、「どうしてこの子は、こういう考え方するんだろう。この子が何を正義と思ってこういう考え方してるのかな」と、学生時代嫌いだった人に対しても振り返って共感する作業をするようになりましたね。嫌いな人もそこで終わりじゃなくて、「共感」と「理解」をするようにしています。
今後は、自分の年齢と合ったキャラクターを描くことにも挑戦したい!
――『別冊マーガレット』で漫画を描くときに気をつけていることはありますか?
幸田:読者が女子中高生なので、その子たちが読んだときに「きゃー♡」ってなってくれるようなものをなるべく取り入れられるようにはしてます。前はそんな気にしていなかったんですけど、そっちのほうが喜んでくれるじゃないですか。もちろん、自分が描きたいことの範囲で、ですけどね。
――素朴な疑問なんですけど、毎月胸キュンを出し続けていて、アイデア不足にはならないんですか?
幸田:なります。困るときもあるけど、友達のコイバナを聞いてそれいいね! みたいになったり、男友達といるときに、今この人がこうしてくれたらキュンとするな、と妄想したり。
――今、Twitterでは、4枚画像で漫画を展開したり、それをシリーズ化させたり、新しいタイプの漫画家さんが登場していますが、そういうことに対してはどう思いますか?
幸田:おもしろいですよね。山科ティナちゃんの「アルファベット乳」もめっちゃ楽しみしていますし。それであんなにフォロワーさんが増えるのもすごいと思うし、あれだけシェアされていて、すごいなって。今は、自分の発信したものが広まるツールがたくさんあるので、どんどん活用したほうがいいと思います。
――出版社サイドは、そういう漫画に関するツイートを見ることはありますか?
担当編集者:見ます。「こういうのが流行っているんだ」「こういうのアリなんだ」とか、読者の人たちが見ているものはチェックしますね。なんで面白いと思っているんだろうとか、シェアされている理由に対してすごく興味があるので。
だからこそ発売後は、Twitterでもエゴサーチすることもありますよ(笑)。どう受け入れられているかとか、どう思ったのかとか、感想をつぶやいてくれていることはうれしいことなんです。
幸田:読者の方からの感想がなくちゃ、生きていけないよね(笑)。
――先生が今後挑戦していきたいことはありますか?
幸田:今の私の年齢と重なる主人公を描いてみたいですね。やっぱり旬なうちに旬な気持ちを掴んでおきたいので、いずれやってみたいことではあります。
――楽しみにしています。では最後に、読者に対してメッセージをお願いします。
幸田:高校生って何しても許される年齢でもあると思うので、興味ややりたいことがあるのなら、どんどん首を突っ込んでいって、伸び伸びと今を楽しんでください。
幸田先生は、明るくて、おもしろくて、サービス精神旺盛で。とてもフランクに接してくださり、作風そのままの距離感の近さと優しさを感じることができる素敵な方でした。そんな先生が描く漫画だからこそ、読者の方の共感と指示を多く集めているのだと思います。現在連載中の『センセイ君主』もますます目が離せません!
Profile
幸田もも子
1984年9月24日生まれ。東京都出身。高校2年生で漫画家デビュー。代表作『ヒロイン失格』は、全10巻で累計140万部を超える大ヒットとなり、桐谷美玲主演で実写映画化も果たす。現在、『別冊マーガレット』にて、『センセイ君主』を連載中。
Twitter
https://twitter.com/momokokouda?lang=ja
この記事のテーマ
「マスコミ・芸能・アニメ・声優・漫画」を解説
若い感性やアイデアが常に求められる世界です。番組や作品の企画や脚本づくり、照明や音響などの技術スタッフ、宣伝企画など、職種に応じた専門知識や技術を学び、実習を通して企画力や表現力を磨きます。声優やタレントは在学しながらオーディションを受けるなど、仕事のチャンスを得る努力が必要。学校にはその情報が集められています。
この記事で取り上げた
「漫画家」
はこんな仕事です
漫画を制作して収入を得る作家のこと。コメディー、恋愛、スポーツなどさまざまな分野が存在する。ひとコマ、4コマ、連載、長編作品まで日本の漫画文化は国際的に高い評価を得ている。物語や登場キャラクターの設定を考えてシナリオをつくり、次にせりふや場面のコマ割りを行って、最後にペン入れをするのが仕事の基本的な流れ。作品はコミック誌や新聞、雑誌に掲載されたり、同人誌をつくって発表・販売を行ったりする場合が多い。人気が出れば単行本化、映画化と活躍の場が大きく広がる。
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