チーム作りをとおして知る“自分” 専修大学附属高等学校の学びをリポート:前編
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東京都杉並区にある専修大学附属高等学校で2011年から開講されている選択授業「チーム作り講座」。この講座ではチーム作りに必要なスキルやマインドを培うことを目的に、「場を創り、場に価値を」のコンセプトで大学生や地域の方々など普段の高校生活では知り合うことのできない異世代と交流しています。今回、進路のミカタでは全国でも例のないこのユニークな学びを見学しに行ってきました! その前編をお届けします。
この記事をまとめると
- 「場を創り、場に価値を」のコンセプトで開催されている「チーム作り講座」
- チーム作りに必要なスキルやマインドを培うことを目的に行われている
- 普段の高校生活では知り合うことのできない異世代と交流できる
「チーム作り」をテーマに社会で役立つ力を身につける!
同講座では、「チーム作り」をテーマに毎週さまざまなことに挑戦しています。例えば、どうすれば良いコミュニケーションが取れるかをダンスやヨガをしながら考えたり、地域で活躍する企業の代表をゲスト講師として招いて中高生を呼び込むイベントをチームごとに企画してみたり。その中で高校生たちは、社会に出たときに役立つ能力を身につけることができます。
経営や新商品の開発などに関心があるという同校2年生の鈴木日菜さんは2年連続で同講座を受講。「どうすれば人を惹きつける話し方ができるか知ることができた」とこの講座での学びについて魅力を語ってくれました。
また、同校2年生の野部勝暉さんは「このチーム作り講座で1年間学んでいく中で、自分のことを考えられるきっかけができた」と話します。英語や数学など、一般授業では得られない自分自身と向き合う貴重な時間を過ごしています。
高校生に向けて、大学生がワークショップを開催
進路のミカタ編集部が見学に伺った日には、同校の卒業生を含んだ大学生が設計したワークショップが開催されていました。
この日のワークショップのゴールは「選択の迷いについて語り合い、自分の迷いに向き合う」。高校生たちに将来の選択肢を増やすためにはどうすればいいのか、そして将来への迷いが生じたときにどのように自分と向き合えばいいのかを考えるきっかけを作りたいという大学生の想いからデザインされた学びです。
2部構成のワークショップ。プログラムは以下のように進みました。
<1部>
・アイスブレイク
・選択の余地がない人生、迷わない人生について考えてみる
・自分の将来への迷いと向き合い、なぜ迷うかを改めて考える
・過去にした最大の決断と、そのときの気持ちをノートに記入する
<2部>
・大学生がマスターや常連客に扮したBarを高校生が選ぶ
・Barの各マスター、常連客と高校生が人生の迷いについて深く語り合う
・Barで語り合ったことを全員で共有する
・今日の気づきを振り返りシートに記入する
迷いのない人生はシアワセ?それとも不幸?
第1部、顔合わせを兼ねてのアイスブレイクでは、各自の椅子の下に有名人の顔の一部が貼られたカードが用意されていました。それらを集めて一枚の絵にするゲームを通じて、楽しい雰囲気でチーム分けが行われ、ファシリテーターの進行により生徒同士が話しやすい雰囲気が生まれ、高校生と大学生の混合チームがつくりあげられました。
そして、ファシリテーターからそれぞれが持つカードを開くように指示がありました。各自がカードを開くと、そこには「〇〇大学の××学部に進学し、公認会計士の専門学校に通い、合格のために勉強しなさい」「ゴハンは朝食とパンと玉子焼きで、夜は必ず3時間勉強すること」など、勝手に決められた将来が事細かに断定調で書かれていました。
あらかじめ決められた将来。それについての反応は? チームで話し合いがもたれると、高校生の口からは「嫌だ」「こんな人生歩みたくない」など、否定の反応が多く出ました。誰かに決められた将来を歩むことは一見すると気楽なようですが、人生に迷うことよりも嫌なことだと多くの高校生が感じたようです。
そこでファシリテーターから「迷うことは納得のいく人生を送るために必要なことではないか?」という問いが投げかけられ、事前に手渡されていた「私ノート」にそれぞれにとって「人生最大の決断」と、そのとき大事にした「気持ち」を書く時間がつくられました。
「高校を決めたとき」「部活を辞める決断をしたとき」など、等身大な本音を書いていく高校生たち。一方の大学生たちも「大学を決めたとき」「就活のこと」など、それぞれの決断について書いていきました。
高校生と大学生、立場は違うけれど悩んでいるのは同じ
今回のチーム作り講座 第1部のねらいは、高校生が改めて自分の人生の迷いに向き合うこと。その心の変化を通じて、立場は違っても同じように悩みを抱える大学生をより身近な存在と感じ、共感を持つことも多かったようです。
例えば、同校2年生・竹中初さんは「もっと大人になってから考えると思っていた進路のことなどを、自分も数年後には考えないといけないことが分かった」という感想を持ちました。
その他にも「自分と同じように迷いを抱えている人がいることが分かった」「大学生も自分たちと似たようなことで迷って決断をしたんだと感じた」など、共感の声が多く上がりました。
また、感じたことをシェアすることで高校生と大学生の双方が心を開いていく姿勢が生まれたのも興味深い変化でした。
続く第2部では、大学生数名がBarのマスターに扮して、高校生たちとより深い話をすることになります。その中で、高校生たちにさらなる変化は起こるのでしょうか? 後編に続きます。