もし裁判員に選ばれたらどうすればいい?

この記事をまとめると
- 裁判員制度によって、一般市民の感覚が判決に取り入れられるようになった
- 裁判員は、市町村などで候補者がリストアップされ、くじなどで決められる
- 「法学」では、学問として法律と関わっていく
裁判員制度のメリットとデメリットは?
2009年からスタートした「裁判員制度」をみなさんはご存じですか? 一般の人たちも裁判に参加することになったこの制度には、いったいどのようなメリットがあるのでしょうか? 高校生のタカシくんが弁護士のお父さんに聞いています。
裁判員はくじで決められていく?
タカシ「なあ父さん、ちょっとお願いがあるんだけど……。実は今日、授業で『裁判員制度とは何か説明しろ』って言われたんだけど、うまく答えられなくて……。俺、実はよく分かってないんだけど、いったいどういう制度なの?」
父「お、妙に勉強熱心じゃないか! 先月、数学のテストで3点しか取れなかった男とは思えないな!」
タカシ「クッ……なんでそのことを!」
父「フフフ、ちゃんとお母さんから聞いてるんだよ。まあいいや。裁判員制度について聞きたいんだな。これはつまり、裁判に国民が参加して、訴えられた人が有罪か無罪かを判断するという仕組みだよ。簡単にいえばね」
タカシ「そこまでは何となく分かるんだけど……俺が知りたいのは、なんでそんな制度をつくったのかということさ」
父「おー、本当にどうしたんだ? そんな勉強熱心だなんて……。裁判員制度をつくった理由はね、これまで裁判には、法律のプロフェッショナルしか出ていなかった。そうすると、法律については詳しいんだけど、もっと一般的な感覚とか生活環境の問題とか、そういう市民の目線が入っていなかったんだよ。そこで裁判員制度だ。裁判員制度では、“一般の人”が参加することで、市民レベルの判断も含めた判決を下すことを狙いとしたんだ。そのほうが、世間の人たちも判決に納得できるだろ?」
タカシ「一般の人たちも裁判に参加することで、多くの人が判決に納得しやすくしたのか」
父「そうだ。あとは、裁判員制度ができることで、一般の人が裁判に興味を持つようになるだろ? それと、裁判自体が今まですごく時間がかかっていたけど、裁判員制度になると短縮されるという面もある。そういうメリットが考えられるね」
タカシ「でも、素人が参加するんだから、マイナスの面もあるんじゃない?」
父「そうだな。当たり前だけど一般の人は法律のプロじゃないから、その時々で判断が変わったり、感情に流されすぎたりしてしまうかも。あとは、テレビのニュースなどで見た情報を、そのまま信じすぎてしまうかもしれないね」
タカシ「そうだよね。俺だって、もし選ばれたらきちんと判断できるか不安だもんなあ。選ばれたくないなあ。ちなみに、どうやって裁判員って選ばれるの?」
父「これは、もともと市町村などで裁判員候補者名簿というのがつくられるんだ。くじで候補者をたくさん選んでね。この時点で名簿に載った人には通知が来る。ただ、それで裁判員になることが決まったわけじゃない。実際の裁判ごとに、またくじなどで候補者を絞り込んでいって、最後まで残ると正式な裁判員になるんだよ。辞退するには、きちんとした理由がないとダメだ」
タカシ「ウゲー、怖いねえ。でも、ちょっと経験してみたい気もするなあ」
父「いざ裁判が始まったら、もちろん裁判員はそこに立ち会う。ドラマとかでよく裁判シーンが流れるだろ? あそこに同席して、有罪かどうか、有罪ならどういう刑を与えるべきかを決める。裁判員だけでなく、裁判官というプロフェッショナルも同席しているけどね」
タカシ「なるほどね。話を聞いていると怖いけど、でもおかげで裁判員についてはよく分かったよ! これで明日、エミカ先生にいいところを見せられる!」
父「ナニ!? お前、先生がキレイだからこんなに張り切っていろいろ聞いてきたのか……。どおりでおかしいと思った! クソー、その先生にお父さんも会わせろ! 一度だけでいいから!」
タカシ「いやだよーん、このスケベ親父が!」
平和に暮らしていくための法律を深く知る「法学」
私たちが平和に暮らしていくための「法律」。裁判員制度によって、一般の人たちもそのルールに深く関わる機会ができたといえます。そして、こういった法律について学ぶのが「法学」という学問です。裁判員にとどまらず、弁護士や裁判官といった「法律のプロ」をめざしたい人は、法学を勉強してみてはいかがでしょうか。
この記事のテーマ
「法律・政治」を解説
国家は通常、多数の国民によって構成されています。それぞれ考え方が異なる国民をひとつの国家としてまとめようと考えれば、法律によって義務や権利を定め、政治(行政)によってそれらをきちんと運用していくことが必要になります。歴史上、多くの国家がこうしたことを目指し、あるものは成功してあるものは失敗してきました。どのようなときにあっても、道しるべとなるべき法曹家や政治家や評論家などの専門職は不可欠です。
この記事で取り上げた
「法学」
はこんな学問です
法学の研究領域は広い。憲法、民法、刑法に刑事・民事の両訴訟法と商法(大部分は会社法に移行)を合わせて六法と呼ぶが、これらは重要な法律のごく一部にすぎない。法学では、限りなく追加されていく法律を覚えるのではなく、それらの法律が生み出される原理と法律を活用して社会問題を解決するための思考法を学ぶ。また、法律は時代や社会制度とも密接に関係しており、社会問題についての最新情報も常にアップデートしておく必要がある。
-
PICK UP! 「法学」について学べる学校
-
法律・政治について学べる学校

