超能力? ついにテレポーテーションが実現!?

この記事をまとめると
- A地点からB地点へサッと瞬間移動! 情報のテレポーテーションが実現間近
- カギとなるのは電子や光子に備わった、距離を超えて瞬時に情報を伝えるフシギな性質
- 量子力学や情報学には、昨日までの世界や常識を変える可能性が秘められている
情報を瞬間移動させる時代がやってくる!?
マンガやアニメなどで誰もが一度は聞いたことのある「テレポーテーション」。モノや人が、ある地点(A)から、遠く離れた地点(B)へ瞬時に移動する現象、もしくは能力のことを言います。
しかし、テレポーテーションは光よりも速い速度での移動を必要とするため、残念ながら人間で実現できるかどうかはいまだ未知数。一方、私たちがパソコンを通じて行う情報交換においては、このテレポーテーションがかなり現実味を帯びてきています。
量子テレポーテーションで情報を高速化!
情報のテレポーテーションで重要なのが、光子や電子の仕組み。光子や電子は2つのペアになっており、片方の状態が決まることでもう片方の状態も確定するという不思議な性質を持っています。まるで仲良しの双子みたいですね。片方の状態が決まってから、もう片方の状態が決まるまでの時間はほんの一瞬。たとえ2つが何万キロ離れていても、この時間はほとんど変わらないことが分かっています。つまり、光子や電子は、一瞬のうちにはるか遠くのペアへと情報を伝えていることになるのです。
この情報伝達スピードは光より速いとされ、いわば情報が「テレポーテーション」に近い状態で移動していることが分かっています。そしてこの作用を使えば、みなさんが使っているパソコンなどで、さらに高速な情報伝達ができるようになります。
こうした研究は「量子テレポーテーション」といわれており、東京大学大学院工学系研究科の古澤明教授が世界をリードしています。古澤教授は、先述した性質を引用した量子テレポーテーションを行い、2者だけでなく3者間~9者間まで、その実験に成功。さらに2013年には、同教授のグループで量子テレポーテーションを完全成功させました。
この技術が応用されれば、現在でも既に速いと感じている情報通信のスピードが、さらに高速化される可能性があるのです。
目では見えない「小さな世界」に詰まっている不思議
光子や電子は、目で見ることなどとてもできないほど小さなサイズ。そういったミクロなものの仕組みや性質については、量子力学という工学の分野で研究されています。私たちにとって夢ともいえるテレポーテーションのヒントが、小さな光子や電子の中にあったというのはとても不思議なことです。
情報伝達のスピードが上がることで、何が変わるのかを考えることにも意味があります。みなさんが行うインターネット閲覧では十分な通信速度でも、企業同士が大容量のデータをやりとりすれば、どうしても通信速度は落ちます。でも、量子テレポーテーションで瞬時に相手にデータを渡すことができたらどうでしょう?
こうした未来の技術は、世に出るまではひっそりと研究が進められることが多いもの。ところがある日突然、昨日までの世界や常識を変えるような重大な研究としてスポットライトを浴びることがあります。これからの工学や応用物理学には、そうしたチャンスがあるといえそうです。
この記事のテーマ
「数学・物理・化学」を解説
私たちの生活基盤である自然界で生じるさまざまな事象や物質、それらが織りなす理論が研究対象です。宇宙や生物がどのようにして誕生し、どのような構造になっているのかという、究極的な知的探究心は人類ならでは。森羅万象の構造や性質、法則と変化を探求する物理や化学、その習得に必要な数学というように、これらの学問は互いに深く関連しています。未知の領域への研究を進めながら、さまざまな原理解明をしていく分野です。
この記事で取り上げた
「物理学」
はこんな学問です
自然界の物質や現象を理論で裏付ける学問。理論を習得するだけでなく、たくさんの実験や演習が必要になる。「理論物理学」は数学や量子力学を用いてこれを解明する分野で、ほかに素粒子の性質などを研究する「素粒子物理学」、宇宙の構造などを調べる「宇宙物理学」など、世の中のあらゆる物質、現象が研究の対象になる。専門性の高い分野で、情報通信業界や製造業界などに進むケースが多いが、大学や研究機関で、研究職を選ぶ人もいる。