坂本龍馬って、どうして有名になったの? 龍馬を有名にした一人の男

今では、明治維新の立役者として有名な坂本龍馬ですが、実は1960年代までは、ほとんど知られていない存在でした。そんな彼を歴史的スターに押し上げたのは一冊の本。龍馬を有名にした一人の歴史作家についてご紹介します。
この記事をまとめると
- 福山雅治が演じた坂本龍馬を有名にしたのは、司馬遼太郎の小説「竜馬がゆく」
- 第二次世界大戦までは龍馬はデモクラシーの象徴だった
- 「竜馬がゆく」の龍馬像は、高度成長期の自由な雰囲気の中で広まっていった
大河ドラマで一躍有名になった坂本龍馬
福山雅治さんは、多くのヒット曲を持ちながらテレビ、映画で活躍する人気俳優です。彼にとって時代劇の代表作と言えば、2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」ということになるでしょう。平均視聴率が18.7%で、最終話が文化庁芸術祭参加作品にもなった名作です。
実は坂本龍馬がNHK大河ドラマで取り上げられるのはこれが2回目でした。1回目は、「竜馬がゆく」で、この原作を書いたのが、司馬遼太郎です。「竜馬がゆく」は文庫本で8巻にもなる長編歴史小説。理想を実現するために奮闘する龍馬の姿は、多くの人に生きる勇気を与えてきました。司馬遼太郎の作品は戦国時代や明治維新を題材にしたものが多く、NHK大河ドラマにも「竜馬がゆく」以外に5作品が取り上げられています。これほど多くの作品が大河ドラマに取り上げられたのは、司馬遼太郎だけです。
明治維新後から第二次世界大戦まで人気を集めた龍馬
坂本龍馬についての最初の本格的な小説は、明治時代の自由民権運動の中で書かれました。日露戦争の日本海海戦の前には、「皇后の夢枕に現れて海戦の勝利を約束して心配しないようにと言葉を掛けた」と全国の新聞で報道され、戦意高揚に使われることもありました。大正デモクラシーの時代になると、坂本龍馬のサイレント映画が多数作られています。このように龍馬は天皇家にとっての恩人であるとともに、大正デモクラシーの象徴としてもとらえられていましたが、第二次大戦後は、天皇家のために尽くした人間として戦争の記憶と重なり、忘れられていきました。
陸軍の将校として第二次世界大戦を終えた司馬遼太郎は、戦後、数社の新聞社を転々としつつ、新聞記者をしながら小説を書くようになりました。戦時中の経験から小説を書くことにある種の使命感を持っていたそうです。
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」が書かれた時代
1960年代、安保闘争が終わり、池田内閣が発足。所得倍増計画のもとで高度成長が始まり、好景気の中で自由な雰囲気が世の中を覆います。一方、安保闘争に負けた社会改革を目指す多くの若者が敗北感を抱いていました。彼らは後の団塊の世代であり、社会に大きな影響を与える人達でもありました。
そういう時代の雰囲気の中で、「竜馬がゆく」は出版されました。龍馬の生き方は当時の時代の雰囲気に合っていて、新聞の連載小説として発表された後、単行本になり、民放のドラマ、舞台、NHK大河ドラマなどに取り上げられました。また、この話を参考にして作られた、「おーい!竜馬」というマンガも発表され、アニメ化もされています。このように、多くのマスメディアに取り上げられたことにより、司馬遼太郎が描いた龍馬像は、誰もが知っているものになりました。
龍馬に限らず、今は私たちにとって馴染み深い歴史上の偉人たちの中には、歴史的事実や自分の達成した偉業だけではなく、それをもとにして描かれた小説やドラマなどがきっかけで有名になった人がいます。歴史上の人物を研究する際には、彼らの背中を押した時代背景や作品を探ってみるのもおもしろいですね。
この記事のテーマ
「文学・歴史・地理」を解説
文学は、長い歴史のなかで変遷してきた人間の生活や社会、人々の考え方や感情の変化などを、文章表現をもとに考える学問です。文献を読み解いて比較検討し、過去から現在、さらには未来に至る人間のあり方や社会について研究します。地理学や歴史学は、今日の私たちの生活や文化、経済活動などについて、基盤となった地形や気候、史実やさまざまな事象、最新の研究結果や歴史的な遺構をもとに、その成り立ちから考える分野です。
この記事で取り上げた
「歴史学」
はこんな学問です
歴史学とは、対象とする大陸・国・地域などにおいて、過去に起こった物事を取り上げ、当時それがどのような意味を持っていたのかを、残された物や建造物、文章などから研究する学問である。ただ、資料を正確に読み取るだけではなく、事実かどうかを疑い、踏み込んで検証する批判的視点も重要である。歴史学の基本的なラインナップには、日本史、東洋史、西洋史、考古学がある。また、政治制度・経済活動・芸術文化・信仰宗教などに特化した考察も行う。
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