落書きと紙一重? ピカソが天才といわれるのはなぜ?

この記事をまとめると
- ピカソの「アルジェの女たち」という絵は215億円で落札された
- ピカソの絵は一見落書きのように見えるが、数年ごとに作風を変え、さまざまな絵を描いている
- ピカソは生きている間にもっとも絵が売れた画家でもあり、商才もあったと言われている
ピカソの絵が史上最高値で落札!
美術の教科書にも載っている有名な画家、パブロ・ピカソ。彼が描いた「アルジェの女たち」という絵画は、芸術作品としては史上最高値の1億7936万5000ドル(約215億円)で落札されたことで話題になりました。
しかし、ピカソの絵といえば、パッと見た感じは子どもの落書きのようにも見えます。とても200億円を超える価値があるようには見えません。なぜピカソの絵には、これだけの値がつけられるのでしょうか?
ピカソが天才と言われる理由とは?
約215億円で落札された「アルジェの女たち」をはじめ、「泣く女」や「ゲルニカ」などの絵画は、一見、子どもが書いた落書きのような印象を受けます。たしかにこれだけを見ると、「ピカソって実は絵が下手なんじゃないの?」と思うかもしれません。
しかし、幼少期には、まるでプロの画家が描いたようなデッサンを何枚も描いています。8歳のころに描いたリンゴの絵があまりにうまかったため、画家であった父親が絵を描くのをやめてしまったという話もあるほど。
大人になってからも、ピカソは次々と作風を変えていきます。親友を亡くし青く暗い絵ばかり描いていた「青の時代」、恋人と幸せな日々を過ごした「バラの時代」、アフリカ彫刻に影響を受けた「アフリカ彫刻の時代」、禁欲的で抽象的な作風の「キュビスムの時代」、妻と仲が悪かった「シュルレアリスムの時代」、コンドル軍団のゲルニカ爆撃を非難した「ゲルニカの時代」など、数年ごとにまったく違うタッチの絵を描いているのです。
落書きのような絵と言われているのは晩年の時代で、ピカソ自身は「ようやく子供のような絵が描けるようになった」と言っていたそうです。個性的で独特の描写は、彼にしかできない技だったからこそ、ピカソは天才と呼ばれているんですね。
商売の才能もあったピカソ
ピカソが天才と呼ばれる理由は、絵を描く才能があったというだけではありません。昔は、お金持ちの「パトロン」と呼ばれる支援者がいなければ画家として絵を描いていくことは難しく、絵に価値がついたのは本人が亡くなったあとというケースも多々あります。しかし、ピカソは商売の才能があり、一生のうちに1万3500点の油絵と素描、10万点の版画、3万4千点の挿絵を描き、自身のサインをして次々と売りさばいていったのです。
たとえばブランドロゴの入っていないバッグより、シャネルやルイ・ヴィトンというブランドロゴが入ったバッグに価値があるように、ピカソは自分自身をブランド化し、絵を高く売ることに成功しました。商売上手な画家ということも、ピカソが天才と呼ばれる理由の一つでしょう。
一枚の絵画には、画家の人生や時代背景がつまっていて、それをどう捉えるかは見る者次第。落書きみたいに見えたとしても、なぜ画家がそのような絵を描くようになったのか調べてみると、思いがけないストーリーが隠されているかもしれません。美術という芸術分野、そして学問は、とても奥深い魅力がある世界だといえそうです。
この記事のテーマ
「芸術・表現・音楽」を解説
最近では、国内外を問わず活躍し、高い評価を受けているクリエイターが多くいます。絵画や造形、声楽や楽器演奏、演劇や芝居、マンガやアニメーションなど、さまざまな芸術分野で多くの人を感動・共感させる感性や技術を磨きます。また、それを裏打ちする理論や歴史を学び、指導者や研究者としてのスキルも高めます。
この記事で取り上げた
「美術」
はこんな学問です
芸術の創作者または評論者としての知識と技能を学ぶ。領域としては、平面、立体といった区分けに加えて、現在ではデジタルメディアも含まれる。平面では油彩画、水彩画、日本画、立体では彫刻、彫塑が主なジャンルとして挙げられるが、伝統的な手法によらず、素材を混合した作品や、観客参加型のパフォーマンスを作品とする場合もあり、表現は広範囲に及ぶ。学校では技能だけでなく、画材の専門知識、美術史も学び、理論と実践の両面で専門性を高める。
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