何を描いてるかよく分からない、あのピカソにちょっと親近感が湧く話

レディースファッションのWebサービスCUBKI(カブキ)を運営するベンチャー、ニューロープ社の経営者酒井より、アートに関する記事をお届けします。
この記事をまとめると
- 以前は見たままのものを絵に描くことが画家の仕事だった
- 19世紀に写真機が発明されて、芸術界に激震が走った
- 写真にはない価値を追い求めて、印象派やキュビズム、抽象画などが生まれた。
以前は見たままを描くことが画家の仕事だった
「ピカソ」という名前を聞いたときに思い浮かぶのは、美術の教科書に載っている「何だかよく分からない絵」ではないでしょうか。あの絵を見て「素晴らしい!」と心から思える人はそう多くないと思います。
実はピカソも10代の頃は、写実的な絵を描いていました。マドリードで開かれた国展で佳作を取ったのは、16歳という若さでのこと。それほどまでに、もともと写実的な絵に長けていたのです。
そのピカソがなぜ、あのような絵を描くに至ったのか、気になりませんか?
18世紀の頃まで、画家の仕事は「見たままを描くこと」だったと言われています。このために様々な絵画技法が開発されてきました。
空間的に遠くにあるものが、キャンバスに描いたときにも遠くにあるように見せるためにはどうしたら良いか。
遠近感のある空間をどのようにしたら平面のキャンバスに歪みなく収めることができるのか。
「どうすればもっと本物らしくなるか」
これを突き詰める画家という職業は、芸術家というよりも職人と呼ぶにふさわしいものだったようです。
写真機の発明が画家たちに衝撃を与えた
ところが19世紀にこの状況が一変するような出来事が起きます。
1824年、ニセフォール・ニエプスが写真機を発明したのです。
空間をそのまま切り取る写真機は、当時の画家たちが目指していた理想に極めて近いものだったといえるでしょう。
つまり、写真機の発明が画家の存在意義自体が危うくしてしまったのです。
画家のポール・ドラロッシュは、初めて写真を見たときに「今日から絵画は死ぬ」という言葉を残しているそうです。
画家の大きな収入源の一つが貴族の似顔絵を描くことだったのですが、将来その役割が写真に取って代わられるのは目に見えていることでした。
写真とは違う価値を求めてピカソは生まれた
今までと同じように写実的にものを描いていたのでは、写真機には敵わない。何かしら手を打たなければならない……。
そんなやむにやまれぬ事情から、いわゆる「芸術」が生まれたとされています。
物体ではなく「光」を表現することに徹するモネやドガに代表される印象派、ものを一面的にではなく様々な角度から見た上で一つの画面に構成するピカソのキュビズム、そもそも具体的な何かを描くことをやめたカンディンスキーの抽象画など。
様々な画風が生まれ、思想が絡み、絵画は爆発的に多様化していきました。写真機が発明される以前から一転して、写実的ではないことに価値が求められるようになったようです。
こういった背景が分かると、何だかアートにも興味が持てそうではないですか?
美術史という学問分野では、歴史的な背景も含めて、美術がどういった変遷を遂げてきたのかを学びます。
例えば写真機が発明される以前は、宗教や政治を目的として絵が描かれることもたくさんあったようです。イエス・キリストや聖母マリア、エンジェルが描かれた壁画はみなさん教科書でもご覧になったことがあると思います。中世ヨーローッパでは、高齢者を敬うことを推奨するために、子どもたちが熱心におじいさんの話を聞いている様子が描かれるようなこともあったそうです。
今までなかなか理解できなかったアートを、美術史から紐解いてみるのも一興ではないでしょうか。
ライター:酒井 聡(さかい さとし)
株式会社ニューロープ・代表取締役/株式会社Present Square・執行役員
2014年1月に独立起業。レディースファッションのウェブサービス「CUBKI(カブキ)」事業のほか、Webサイトやスマホアプリなどのデザインや開発事業を手がけています。
この記事のテーマ
「芸術・表現・音楽」を解説
絵画や造形、声楽や楽器演奏、演劇や芝居、マンガやアニメーションなど、さまざまな芸術分野で、表現者としての感性や技術を磨きます。近年では、活躍の場を広く海外に求め、高い評価を受けている人たちも多くいるようです。作品の制作や演習などの実技はもちろんのこと、それを裏打ちするために専門分野の歴史や理論の授業も行われます。そのため、アーティストとして作品を発表する以外に、指導者や研究者としての道もあります。
この記事で取り上げた
「美術」
はこんな学問です
芸術の創作者または評論者としての知識と技能を学ぶ。領域としては、平面、立体といった区分けに加えて、現在ではデジタルメディアも含まれる。平面では油彩画、水彩画、日本画、立体では彫刻、彫塑が主なジャンルとして挙げられるが、伝統的な手法によらず、素材を混合した作品や、観客参加型のパフォーマンスを作品とする場合もあり、表現は広範囲に及ぶ。学校では技能だけでなく、画材の専門知識、美術史も学び、理論と実践の両面で専門性を高める。
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