人生観を変える機会としての「受験」~東大生が語る、高校生活で変わった人生観~
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森川さんの体験記。高校の校風は「三兎を追え」。勉強・部活・行事・遊び、すべてにおいて限界に挑戦した高校生活~受験、そして大学入学を通して、受験生活が人生観に与えた影響を語ります。
この記事をまとめると
- 高校時代は勉強だけでなく、学校行事にも全力投球した
- その経験から、勉強だけが大事なのではないことを学んだ
- 様々なことに打ち込めば、受験勉強における決意も一層深まる
勉強以外にも全力で打ち込んだ3年間
Q. 森川さんの母校は、行事や部活も全力投球しながら、東大合格者も多数輩出していると伺いました。母校の校風を具体的に教えてください。
A. 「二兎を追う者は一兎をも得ず」という言葉がありますが、僕の出身高校では、この言葉に逆らった「少なくとも勉強・部活・行事の三兎を追え」という言葉が校訓でした。授業前の自発的な早朝学習に始まり、全行事雨天決行、春夏の10㎞・50㎞マラソン、夏は伊豆の海で軍隊式遠泳、救急車常駐の体育祭と、特徴には事欠かない文武両道の男子校です。もちろん部活も3年夏まで、部活によっては冬まであります。卒業制作の動画作成に3年の夏を捧げたクラスもありました。「こいつは勉強一本に打ち込んでいるなぁ」という友人はほとんどいませんでしたね。
受験期に印象的だったのは、高3の11月、東大模試の日に皆でラグビー部の応援に行ったことです(笑)。常識的に考えたらマイナスに思えるかもしれませんが、行ってよかったと今でも思っています。自分が受験に向けて勉強している中、文字通り高校生活すべてを捧げて勝負している仲間がいるのです。確かに、テストは自分のほうが良くできるのですが、ラグビー部の彼らは、きっと私はいつまでも経験できないことを今経験しているのだろうな、と肌で感じました。そのような彼らが、見事花園(全国大会)行きを決めた時は感動的でした。いろいろな意味で、一生忘れられない思い出です。
勉強というのは、数ある選択肢の中の一つでしかない
Q. 確かに、受験生の一般常識からしたら特殊な校風かもしれませんね(笑)。そのような校風から自分の価値観に影響を受けた点はありますか?
A. 思えばラグビーに限らず、自分の周囲には美術、音楽、スポーツ、本当にいろんなことに打ち込んでいる仲間がいました。その中で起こるのが、価値観の相対化とでも言いましょうか。勉強して受験するというのは、選択肢の一つでしかないと、受験生活を通して確信しました。私はたまたま勉強が好きだし得意だったので(他が振るわなかったというのもありますが。 笑)、勉強を「勝負の場」に選んだだけの話であって、本来的に世の中には、「価値あるもの」は綺羅星のごとく転がっているのだと思います。
勉強以外にも打ち込むことが大切
Q. 勉強だけがすべてではない、ということですね。では、この経験から、高校生の皆さんに、メッセージをお願いします。
A. 本当に大切なのは、何に価値があるかを正確に見積もることではなくて、それが自分の手でつかんだものかどうか、ということだと思います。価値あるものが他にたくさんあることを知っていればこそ、「それでも自分はこの道を選んだのだ」と決意も一層深まるし、仮に受験の結果がどうであれ、それを「上に昇るか下に落とされるか」、という話ではなく、「右に行くか左に行くか」という考え方でとらえられるようになって、非常に前向きに受験に取り組めるようになります。現代は一つのことに集中して結果を残すことが賞賛されますが、そうじゃない生き方もあるんだぞ、というのを知ってほしいし、私も忘れずにいたいと思います。